「債務整理」とは、借金の返済が困難になった場合に、法的手続きを通じて借金の減額や返済期間の延長を図り、経済的な立ち直りを目指すための手続きです。日本において、債務整理は主に「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の3つの方法に分類されます。
これらの手続きは、債務者が自身の状況に応じて選択し、弁護士や司法書士のサポートを受けて進めることができます。
債務整理の手続きは3種類あります。
任意整理
「任意整理」は、債権者と直接交渉して借金の返済条件を見直す手続きです。この手続きでは、裁判所を通さずに進められるため、他の債務整理手続きと比べて手軽で柔軟です。具体的には、利息や遅延損害金のカットを目指し、元金だけを一定期間内に分割で返済する形で和解を図ることが一般的です。
任意整理は、債務者が返済能力を持っている場合に適しており、債務の減額よりも返済期間の延長や負担軽減が主な目的となります。
また、保証人がいる借金を整理の対象から外すこともでき、債権者との合意が成立すれば、保証人に迷惑をかけずに手続きが進められるのもメリットです。ただし、交渉が不成立となることもあるため、すべてのケースで成功するとは限りません。
個人再生
「個人再生」は、裁判所の手続きを通じて借金の大幅な減額を図る方法です。この手続きでは、債務者の収入に応じて、原則として借金の総額が5,000万円以下の場合、借金の一部が免除される代わりに、残りの借金を3年から5年かけて分割で返済します。個人再生の最大の特徴は、住宅ローンを抱えている場合に、その住宅を手放すことなく借金の整理ができる点です。これは「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」と呼ばれ、家を持つ債務者にとって大きな救済措置となります。
ただし、個人再生を利用するためには、一定の収入があることが必要であり、無収入の場合や借金が5,000万円を超える場合は利用できません。また、裁判所の手続きを伴うため、任意整理に比べて時間と手間がかかることもデメリットの一つです。それでも、自己破産とは異なり、財産の大部分を維持しながら債務整理を行うことができる点は大きな魅力です。
自己破産
「自己破産」は、全ての借金を法的に免除してもらう手続きです。自己破産を申請するには、債務者が「支払い不能」状態であること、つまり収入や資産をもってしても借金の返済が不可能であることを裁判所に認めてもらう必要があります。裁判所は、債務者の財産を処分し、その財産を債権者に公平に分配した上で、残る債務を免除するという形で手続きが進められます。
自己破産の最大のメリットは、借金がすべて免除される点ですが、その一方でデメリットも存在します。まず、自己破産をすると、一定の財産(不動産や高額な車など)は処分されてしまいます。また、免責を受けるまでの期間中は、一定の職業に就くことが制限される場合もあります。さらに、信用情報にも自己破産の記録が残り、今後数年間はローンやクレジットカードの利用が制限されることになります。
債務整理の選択基準
債務整理の方法を選ぶ際には、債務者の経済状況や目的によって判断されます。もし返済能力がまだある場合や、保証人に迷惑をかけたくない場合は任意整理が適しています。一方、住宅を維持しながら借金の減額を希望する場合は個人再生が選ばれることが多いです。そして、返済が全く不可能な場合や、あらゆる債務から解放されたい場合は自己破産が最後の手段として選ばれることになります。
いずれの手続きを選んでも、債務整理を行うことで債務者は生活を立て直す機会を得ることができます。しかし、その後の信用情報への影響や生活に与える制約も理解した上で、慎重に判断することが重要です。