民事再生とは、経済的に困難な状況にある企業や個人が、裁判所の手続を通じて再建を目指すための倒産手続のことをいいます。
破産とは異なり、すべての財産を清算するのではなく、債務を整理して経済的な立ち直りを図ることを目的としています。
そのため利用すると会社をそのまま残しておくことができ、債権を返済可能な額までに大幅に減額することができます。
民事再生の概要
民事再生は、債務者が自らの債務を整理し、経済的に再生することを目的とした制度です。借金の一部免除を受けながら、残りの債務を分割で返済する仕組みで、経済的に困窮した債務者にとって再建のチャンスを提供します。債務者は再生計画を裁判所に提出し、その計画に基づいて債務を返済していくことで、破産を回避することができます。
民事再生には、大きく分けて2つの種類があります。
項目 | 内容 |
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個人再生 | 個人が利用する制度で、主に住宅ローンを抱えた給与所得者や小規模な事業者が対象です。 |
法人再生 | 企業や法人が利用し、経営を立て直すための手続きです。企業の事業継続が可能な場合に用いられます。 |
民事再生と個人再生の違い
民事再生と個人再生は、どちらも借金の整理を目的とする手続きですが、対象と手続きに違いがあります。民事再生は主に企業が事業継続を前提に債務を再建する手続きで、企業や法人を対象とします。
一方、個人再生は、給与所得者や個人事業主が利用でき、個人が借金を減額し、3〜5年で分割返済を行う制度です。個人再生では、特に住宅を維持しながら債務整理ができる「住宅ローン特則」が利用できる点が特徴です。
民事再生の手続きは、次のような流れで進行します。
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手続きの流れ
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申立て
まず、債務者が地方裁判所に対して民事再生の申立てを行います。この時点で、債務者は再生計画を立案する準備を始め、債務総額や債権者のリストを裁判所に提出します。
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再生手続きの開始
裁判所が申立てを受理し、債務者に再生手続き開始決定を出します。この決定が下ると、債権者は個別に債務者に対して取り立てを行うことができなくなり、債務者は一定期間、経済的に安定した状態で再建計画を進めることが可能になります。
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再生計画の提出
債務者は、再建のための具体的な計画(再生計画案)を作成し、裁判所と債権者に提出します。この計画案には、債務の減免額や返済期間、返済方法などが含まれます。個人再生の場合、多くの場合、借金は大幅に減額され、3年から5年の期間にわたって分割返済する内容が中心です。
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債権者集会と再生計画の承認
債権者集会が開かれ、債権者が再生計画案に対して賛成か反対かを表明します。債権者の過半数が賛成すれば、再生計画は裁判所によって承認されます。
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再生計画の履行
再生計画が承認されると、債務者はその計画に基づいて債務を返済していきます。計画が適切に実行されれば、残った債務は免除され、債務者は経済的に再建することが可能になります。
民事再生のデメリット
一方で、民事再生にはいくつかのデメリットも存在します。まず、全ての借金が減免されるわけではない点です。民事再生では、再生計画に基づき一部の債務が減額されますが、残った債務は計画に従って返済を続けなければなりません。
また、民事再生手続き中は、信用情報に事故情報が登録されるため、クレジットカードの新規作成やローンの利用が難しくなるなど、信用取引に影響を与えることがあります。この登録期間は通常5〜7年程度です。
さらに、民事再生は手続きが複雑で、弁護士や専門家のサポートが必要になることが多いです。そのため、専門家に依頼する費用が発生する点もデメリットの一つといえます。
民事再生が適しているケース
民事再生は、以下のようなケースに適しています。
- 住宅を手放さずに借金を整理したい人
- 給与所得が安定しており、将来的に返済が見込める人
- 自己破産を避けたいが、借金の減額が必要な人
- 経営が行き詰まっているが、事業を継続しながら再建を目指したい企業