検索の抗弁権[けんさくのこうべんけん]

検索の抗弁権(けんさくのこうべんけん)とは、債権者が保証人に対して債務の履行を請求する際、保証人が主たる債務者の財産からまず支払うよう要求できる権利を指します。これは民法第452条に基づいており、主たる債務者が債務を履行する能力を持っている限り、保証人が自らの財産を差し出す前にこの権利を行使できることを意味します。

検索の抗弁権の要件

検索の抗弁権を行使するためには、以下の要件が必要です。

1.主たる債務者が支払能力を有すること
保証人がこの権利を行使できるのは、主たる債務者が債務を履行できるだけの財産や収入を持っている場合に限ります。もし主たる債務者が破産している場合や、全く財産がない場合は、保証人はこの権利を行使できません。
2.主たる債務者の財産が日本国内にあること
主たる債務者の財産が日本国内に存在し、債権者が容易にその財産を差し押さえできることが必要です。主たる債務者が外国に財産を持っている場合や、財産が隠されている場合は、検索の抗弁権を行使するのが難しくなります。
3.保証人が主たる債務者の財産を明示すること
検索の抗弁権を行使するには、保証人が債権者に対して、主たる債務者のどの財産を差し押さえるべきかを具体的に示す必要があります。ただ「主たる債務者に財産があるはずだ」と主張するだけでは足りず、財産の存在を明示しなければなりません。

検索の抗弁権が行使できない場合

検索の抗弁権は保証人にとって有利な権利ですが、次のような場合にはこの権利を行使できません。

1.連帯保証人の場合
連帯保証人は、主たる債務者と同等の責任を負います。このため、連帯保証人には検索の抗弁権が認められておらず、債権者は主たる債務者に直接請求することができます。
2.保証契約で検索の抗弁権を放棄している場合
保証契約において、検索の抗弁権を放棄する旨が明記されている場合、保証人はこの権利を行使できません。契約自由の原則に基づき、保証人は事前にこの権利を放棄することが可能です。
3.主たる債務者が支払い不能の場合
主たる債務者が支払い不能である、または破産している場合、主たる債務者に財産がないため、検索の抗弁権を行使することはできません。
4.主たる債務者の財産が国外にある場合
主たる債務者の財産が国外に存在する場合、その財産を差し押さえることが困難です。このため、保証人は検索の抗弁権を行使できません。

検索の抗弁権の効果

検索の抗弁権を行使することで、保証人は債権者からの請求を一時的に拒否できます。債権者はまず、主たる債務者の財産を差し押さえて債務を弁済させなければなりません。主たる債務者の財産が十分であれば、その財産から債務が履行され、保証人は支払義務を免れることができます。

ただし、債権者が主たる債務者の財産を差し押さえるのが困難と判断した場合や、主たる債務者に十分な財産がないことが判明した場合、最終的には保証人が債務を履行する義務を負うことになります。

検索の抗弁権の限界

検索の抗弁権は、保証人が無条件に債務を履行することを防ぐ重要な権利ですが、限界もあります。保証人が主たる債務者の財産を明示する責任があり、その財産が実際に差し押さえ可能であることを証明する必要があります。また、主たる債務者の財産が十分でなければ、保証人は最終的に自身の財産で債務を履行する義務を負います。

さらに、連帯保証契約や検索の抗弁権を放棄する旨の契約が結ばれている場合、この権利を行使できないため、保証人は債権者からの請求を拒否することができなくなります。

検索の抗弁権の行使方法

検索の抗弁権を行使する場合、保証人は債権者に対して、主たる債務者の財産がどのように債務の履行に役立つかを明示することが重要です。この際、具体的な財産の情報や、それがどのように差し押さえ可能であるかを示すことが求められます。債権者はこの要求を考慮し、主たる債務者の財産から債務を履行する手続きを進めることになります。

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