仮処分[かりしょぶん]

仮処分とは、民事事件において、訴訟の本案判決が確定するまでの間に、緊急に権利を保護するための一時的な措置を裁判所に求める制度です。仮処分は、将来にわたっての損害や権利侵害を防ぐための非常に重要な手段です。日本では、民事訴訟法や民事保全法によって規定されています。

仮処分の目的と必要性

仮処分の目的は、裁判の長期化によって、最終的な判決が出るまでに当事者の権利が害される事態を防ぐことです。特に、財産権や契約に関わる問題、企業間の取引においては、長期間の裁判中に相手方が資産を隠したり、処分してしまう可能性があります。このような場合に備え、仮処分によって裁判の結果を待つ間でも権利を一時的に保全することが求められるのです。

たとえば、著作権侵害や営業秘密の漏洩、差し押さえを防ぐための保全手段として使われます。もし仮処分がなければ、相手方が財産を散逸させてしまい、最終的な判決で勝訴しても、実質的に救済が得られなくなるリスクがあります。そのため、仮処分は、法的手続きにおいて重要な役割を果たします。

仮処分の種類

仮処分は大きく分けて、「保全処分」と「仮の地位を定める仮処分」の2つに分類されます。

保全処分

保全処分は、訴訟に先立って行われるもので、金銭債権の保全や、特定の物に対する権利を保護するために行われます。具体的には、相手方の財産に対する差し押さえや、処分の禁止命令などが該当します。

たとえば、金銭請求訴訟において、相手方が財産を売却するなどして債権の回収が困難になるおそれがある場合には、保全処分によって相手方の財産を仮に差し押さえることができます。これにより、最終的な判決で債権を回収する権利を守ることができるのです。

仮の地位を定める仮処分

この仮処分は、争われている権利関係について、裁判の結論が出る前に一時的な措置を講じるためのものです。具体的には、契約上の地位や業務の継続に関する仮の判断を求める場合などに適用されます。

たとえば、労働契約の解雇を巡る争いにおいて、解雇が無効であるとして仮に労働者の職場復帰を命じるようなケースがあります。このような場合、最終的な判決が出るまでの間、労働者は仮処分に基づいて職場に復帰し、解雇の効力が確定するまでの地位を一時的に保全することができます。

仮処分の要件

仮処分を申し立てるには、いくつかの要件を満たす必要があります。

1.権利の存在
まず、仮処分を申し立てる側は、自分の権利が現に侵害されているか、あるいは侵害されるおそれがあることを証明する必要があります。これは、債務者が財産を処分してしまう可能性がある場合や、契約違反が行われるおそれがある場合に該当します。
2.緊急性
仮処分は緊急性が認められる場合に限って認められます。つまり、仮処分がなされなければ、申立人が著しい不利益を被る可能性がある場合です。たとえば、相手方が財産を売却したり、無断で事業を停止したりする場合などです。
3.相当の理由
仮処分を認めるためには、申立人が仮処分を必要とする「相当の理由」が存在しなければなりません。これは、単に申立人が権利を主張するだけでなく、裁判所がその主張に対して一定の合理的な根拠があると判断する必要があるということです。

仮処分の手続き

仮処分の手続きは、通常の訴訟と比べて迅速に進行します。仮処分の申立ては、地方裁判所に行います。裁判所は、申立てが正当であると認めた場合、相手方に対して異議申し立ての機会を与える前に仮処分命令を出すことができます。このように迅速な対応が可能であるため、急を要する事案でも適切に対応することができます。

仮処分が認められた場合、その効果は一時的ですが、最終的な判決が出るまでの間、一定の権利保護が実現されます。また、仮処分に異議がある場合、相手方は異議を申し立てることができ、裁判所は再度審理を行うことがあります。

債務整理に関する用語
金融業界に関連する用語
裁判に関連する用語
その他で関連する用語

よく読まれている記事