仮差押え[かりさしおさえ]

仮差押え(かりさしおさえ)は、債権者が債務者から金銭などの支払いを受ける権利を確保するために、裁判所に申立てて債務者の財産を一時的に差し押さえる手続きを指します。

この手続きは、債務者が財産を処分して支払い能力を失うことを防ぐために行われます。特に、訴訟が進行中で最終的な判決が下るまでに時間がかかる場合や、債務者が財産を隠したり売却したりする恐れがある場合に有効です。仮差押えはあくまで一時的な措置であり、最終的な判決が出た後にその効力が本格的な差押えに移行する場合があります。

仮差押えの要件

仮差押えを申請するためには、以下の要件が必要とされます。

1.保全の必要性
債務者が財産を処分してしまう可能性が高い場合、または財産が減少することで債権の回収が困難になる恐れがあるとき、仮差押えの申請が認められます。たとえば、債務者が急に不動産を売却しようとしている場合などが該当します。
2.債権の存在
仮差押えを行うためには、債権者が有する債権が現に存在することが求められます。これは、債務者が債権者に対して支払うべき金銭的な義務があることを証明できることです。このため、借用証書や契約書など、債権の存在を証明できる証拠が重要となります。
3.担保の提供
仮差押えを行う際には、債権者は裁判所に対して担保を提供する必要があります。これは、仮差押えが不当なものであった場合、債務者が受けた損害に対して補償するためです。担保の金額は、裁判所が判断することが一般的であり、通常は差し押さえる財産の価値や債権額に基づいて設定されます。

仮差押えの対象

仮差押えの対象となる財産には、主に以下のようなものがあります。

動産自動車や貴金属など、債務者が所有する有形の財産が対象となります。
不動産土地や建物などの不動産も仮差押えの対象です。仮差押えが認められると、不動産登記簿にその旨が記載され、第三者への売却が事実上難しくなります。
債権債務者が第三者から受け取るべき債権(例えば給与や売掛金)も仮差押えの対象になります。
  1. 仮差押えの手続き

    仮差押えの手続きは、次のような流れで進行します。

  2. 申立て

    債権者は、仮差押えを行うために、まず裁判所に対して申立てを行います。申立書には、債権の内容や保全の必要性、対象となる財産について詳述します。

  3. 担保の供託

    裁判所が仮差押えの申立てを認めると、債権者は裁判所の指定する担保を供託します。この担保は、仮差押えが誤ったものであった場合、債務者が受けた損害を補償するためのものです。

  4. 仮差押命令の発令

    裁判所が仮差押えを認めると、仮差押命令が発令されます。これにより、差し押さえ対象の財産は債務者の自由な処分が制限されます。

  5. 強制執行の準備

    仮差押えが実行されると、債務者の財産は差し押さえられ、債権者は判決確定後にその財産を差し押さえて、債権の回収を図ることができます。

仮差押えの効果と解除

仮差押えが実行されると、債務者はその対象となった財産を自由に処分できなくなります。例えば、不動産の売却や現金の引き出しが制限されることがあります。
一方で、仮差押えの対象となった債務者は、以下のような手段で仮差押えの解除を求めることが可能です。

1.担保の提供
債務者が裁判所に対して十分な担保を提供することで、仮差押えを解除できる場合があります。この場合、債務者の財産は一時的に自由になるものの、最終的な判決まで引き続き監視されます。
2.異議申立て
債務者は、仮差押えが不当であると考える場合、裁判所に異議を申し立てることができます。異議申立てが認められた場合、仮差押えは解除されることがあります。

仮差押えのリスクと注意点

仮差押えは、債権者にとって強力な手段ですが、いくつかのリスクや注意点も存在します。特に、仮差押えが不当であった場合、債務者から損害賠償請求を受ける可能性があるため、慎重な判断が必要です。また、仮差押えを行ったとしても、債務者の財産が十分でなければ、最終的な回収が困難になる場合もあります。

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