任意整理[にんいせいり]

「任意整理」とは、借金の返済に困った債務者が、裁判所を通さずに、貸金業者やクレジットカード会社などの債権者と直接交渉し、借金の減額や返済計画を見直す手続きです。法律の専門家である弁護士や司法書士が債務者の代理人となって交渉を進め、月々の返済額を減らしたり、遅延損害金を免除してもらうなどの条件変更を行うことが目的です。

任意整理は、多重債務に悩む人々が、自己破産などの法的手続きに至る前に解決を図るための選択肢として広く利用されています。

任意整理の特徴と手続きの流れ

任意整理の大きな特徴は、裁判所を介さないため手続きが比較的簡便で、債務者の財産や仕事に影響が少ない点です。また、借金のうちどの債権者と交渉するかを選択できるため、例えば住宅ローンなどの重要な債務を除外して、消費者金融やクレジットカードの債務だけを整理することも可能です。これは、自己破産や個人再生といった他の債務整理方法にはない柔軟性のある点です。
任意整理の手続きは次の流れで進みます。

1.弁護士や司法書士への依頼
債務者はまず、弁護士や司法書士に任意整理の依頼を行います。依頼を受けた専門家は、債権者に受任通知を送付し、以降は債務者への直接の請求がストップします。これにより、取り立てや催促の電話などから解放されることが大きなメリットです。
2.債務額の調査
債権者から取引履歴を取り寄せ、正確な債務額や利息、返済状況を確認します。この過程で、過去の高金利による過払い金が判明することもあり、過払い金があれば、これを元本に充当するか返金を求めることができます。
3.返済計画の立案と交渉
債務の状況に基づき、月々の返済額を調整した新しい返済計画を立て、債権者と交渉します。通常は、将来の利息や遅延損害金をカットして、元本のみを3~5年かけて分割返済する計画を提案します。
4.和解契約の締結
債権者との交渉が成立した場合、和解契約が結ばれ、新たな返済計画に基づいた支払いが開始されます。この返済計画に基づいて、債務者は月々の収入から無理のない範囲で返済を続けることになります。

任意整理のメリットとデメリット

任意整理のメリット

任意整理にはいくつかのメリットがあります。まず、債務者の財産が処分されない点が挙げられます。自己破産では、一定の財産が差し押さえられる可能性がありますが、任意整理ではそうしたリスクがありません。また、整理する借金の対象を選べるため、特定の債務(例:自宅や自動車のローン)をそのまま維持しながら、他の負債だけを整理できる点も大きなメリットです。

さらに、将来の利息や遅延損害金をカットできるため、返済額が大幅に軽減される可能性が高いです。特に、過去に高金利で借り入れをしていた場合は、過払い金の返還が期待できるため、実質的な借金額が大幅に減ることがあります。

任意整理のデメリット

一方で、任意整理にはデメリットもあります。まず、信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に登録され、任意整理後約5年間は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなる可能性があります。これは、借金整理をしたという記録が残るため、金融機関が新たな貸し付けを避けるからです。

また、全ての債権者が和解に応じるわけではありません。中には交渉に応じない債権者もおり、その場合は法的手続きを検討する必要が出てきます。さらに、借金の元本自体は免除されないため、元本は必ず返済しなければなりません。これは、自己破産や個人再生と比較して、借金の負担が完全に無くなるわけではない点で不利と言えます。

任意整理が適しているケース

任意整理は、自己破産ほどの深刻な状況ではないが、毎月の返済が難しくなっている人に適した手続きです。特に、安定した収入があり、一定の返済を継続できる見込みがある場合に効果的です。自己破産を避けたいと考えている人や、財産を守りたいと考えている人には有効な選択肢となります。

任意整理を検討する際には、まずは法律の専門家に相談し、自分の収入や生活状況に合った返済計画を立てることが重要です。

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