領収書が節税に!特定支出控除の対象となるサラリーマンの5つの支出

業務を行うために必要となる資格の受験費、その資格を取得する為の参考書購入費、更にはサラリーマンの仕事着でもあるスーツの購入費。いずれもサラリーマンにとっては必要な支出ですが、これらの支出は自腹というサラリーマンの方も少なくはありません。
このような、サラリーマンが業務を遂行するにあたって必須となる支出が毎年負担になっているという方は、「特定支出控除」を活用する事で税金の節約ができるかもしれません。

特定支出控除とは?わかりやすく解説

特定支出控除とは、簡単に説明してしまうと、サラリーマンが職務や業務に必要となる支出を自腹で負担した際、その自腹で負担した金額に応じて税金を控除できるようにするという制度になります。
このようなサラリーマンに必要な支出を「特定支出」と呼び、この支出が多くなれば多くなるほど、税金の節約になります。
更に詳しい部分は後述しますが、まずは特例支出として認められる8つの支出を紹介します。

1.通勤費

電車やバスなどの公共交通機関利用料や、車のガソリン代など、通勤において発生する費用を自腹で支払っているというケースでは特定支出に該当します。
ただ、通勤費は会社から支給されているケースが多いので、これが特定支出に該当するサラリーマンはそう多くはないはずです。
ただ、パートや派遣社員などの非正規社員は交通費が支給されていないケースが比較的に多い為、そのような方は特定支出控除による税金の節約を視野にいれてみて下さい。なお、グリーン車などの「交通機関設備の利用料金」は特定支出の対象とはなりません。

2.転居費

転勤に伴う引っ越しにかかる費用の他、引っ越し先への交通費などは特定支出に該当します。
出張に伴う宿泊費や旅費、引っ越しに伴う荷造りの梱包費、引っ越し業者の損害保険料も特定支出の対象となりますので、出張が多いサラリーマンの方であれば、税金の節約に役立つ可能性が出てきます。
当然ながら、転勤が終わって帰宅する際に発生する支出も特定支出です。

3.研修費

業務に必要な資格を取得する為の研修、または会社から受けるように指示のあった研修などを受ける際に発生する費用は特定支出に該当します。
研修が開かれる会場までの交通費も対象です。ただ、こちらも会社から費用が支給されるケースが多いので、「研修が開かれる会場に行くための交通費」の部分しか特定支出にならないサラリーマンが多いです。

4.資格取得費

業務・職務を行う上で必要となる資格の受験代などが特定支出に該当します。
IT関連のベンダー資格などは受験費が高額な為、IT企業のサラリーマンであれば資格取得費が税金の節約に繋がるかもしれません。
また、資格試験を受験会場へ行くための交通費も特定支出に該当します。更に言えば、試験に不合格となった場合の受験代も特定支出の対象です。

5.勤務必要経費

仕事をする上で必要不可欠となる出費が勤務必要経費であり、特定支出に該当するものは以下の支出が該当します。但し、これら支出において特定支出控除の対象となるのは65万円が上限です。要するに、以下の支出の合計が65万円を超えた場合、超過分は控除の対象となりませんので注意して下さい。

6.書籍費

資格試験の参考書など、業務・職務を行う上で必要となる書籍の購入代が特定支出に該当します。電子書籍も同様です。必要であれば、新聞や雑誌なども対象となります。
資格取得費は出るけど、参考書などの購入費はでないというケースが多いので、資格取得に膨大な資料の購入が必要なサラリーマンの方は、これが税金の節約として活用できる可能性がでてきます。

7.衣服費

職務・業務を行う上で着用する衣類の購入費は特定支出に該当します。例をあげるのならスーツ、作業着、ワイシャツなどです。ネクタイピンなども含まれます。
また、自社から指定されている服の購入費、例えば仕事中は勤務している会社のブランドの服を着用しなければいけないケース。この場合は私服であっても特定支出に該当します。
基本的に職務・業務中に身に付けなければならない衣類は自腹となるので、この支出が負担となっているサラリーマンの方は多いでしょう。

8.接待費

お客様企業との接待や飲食、菓子折りなどの贈答品購入費は特定支出に該当します。
ただし、これらはあくまで「業務遂行において必要とされる接待」で発生する支出が対象です。職場内での飲み会(歓迎会、送別会など)などで発生した支出は対象外となります。

特定支出控除を利用するハードルは高い?

ここまでで、税金の控除対象となるサラリーマンの支出7つを紹介しました。
スーツ代までもが税金控除の対象となる特定支出に含まれており、サラリーマンの税金節約術としては、是非とも活用したい制度ではあります。
しかし、実際にこの特定支出控除を利用した人は平成30年度で僅か1704名しかいません。知名度が低いという理由もありますが、主な理由としては、特定支出控除を利用する為に超えなければいけないハードルが高い点にあります。
ここからは、そんな特定支出控除を利用するにあたって超える必要があるハードルについて解説します。

会社(給与支払者)から証明書の発行が必要

特定支出控除を利用する為には、その支出に関する明細書(領収書)が必要不可欠ですが、それに加えて給与支払者、いわゆる勤務先から「その支出が業務する上で必要だった」という証明を貰わなければなりません。例えば、スーツ代が特定支出である証明を貰う場合は「そのスーツが業務で必要だった」という証明書類を勤務先に作成してもらわなくてはいけません。
作成といっても、会社側からサインを貰えればいいだけなので作成そのもののハードルが高いという訳ではありません。問題なのは会社側から「必要経費だった」と認めてもらえるか否かです。なお、証明書の雛型は国税庁のWebサイトよりダウンロードできます。
特定支出ごとに証明書を記載してもらう必要があるという点に注意して下さい。

給与所得控除の2分の1以上の支出が必要

給与所得控除とは、サラリーマンを対象とした所得控除の一つです。
もっと簡単に言うと、サラリーマンの収入のうち「年収のうち、この分は税金を課さないよ」な部分が給与所得控除です。
個人事業主でいうところの「必要経費」が、サラリーマンの給与所得控除であるというイメージで問題ありません。

例えば、年収300万円のサラリーマンであれば給与所得控除(非課税分)は108万円です。
計算式は以下のようになります。

  • 収入金額(300万円)×30%+18万円

※計算式の早見表は国税庁の早見表より参照できます。

この給与所得控除の2分の1以上で特定支出控除が発生するので、最低54万円以上の支出が必要となります。
更に、特定支出控除の対象となるのは給与所得控除の2分の1を超過した分です。
特定支出が65万円あったケースで今回の例に当てはめると

  • 「65万円-54万円」で11万円

年収300万円の所得(課税対象になる額)を考慮して考えると、所得税率は5%なので

  • 所得税は「11万円×5%」で5,500円
  • 住民税は「11万円×10%(住民税率、全国一律)」で11,000円

合計、16,500円

この合計額分、税金が節約できることになります。この特定支出控除によって節約できる税金の額の為に、手間をかけられるか否かが、特定支出控除を利用する人が少ない理由に大きく関わっています。

確定申告が必須である

個人事業主と違って、サラリーマンの多くは確定申告を必要としません。
なぜなら会社が申告してくれているからです。しかし特定支出控除で税金を節約するとなると、特定支出があった事を自分で申告する必要がありますので、確定申告が必須となります。
なお、確定申告書には特定支出を記載する項目が別途設けられている訳ではなく、「所得金額」から「特定支出分」を引いた金額を申告するというルールになっています。
例えば、年収300万円であれば、ここから108万円(給与所得控除)が引かれ、「192万円」
更にここから所得控除された額が、所得金額となります。

今回は、所得控除が82万円あったと仮定して計算します。
すると、所得金額(課税対象)は

  • 300万円(収入)-108万円(給与所得控除)-82万円(所得控除)=110万円(所得金額)

となります。

この所得金額から「特定支出分」を引きます。
例えば、その年の特定支出が65万円あった場合、特定支出分は

  • 65万円(特定支出)-(108万円(給与所得控除)×0.5)=11万円(特定支出)

となります。

そして所得金額は

  • 110万円-11万円=99万円(所得金額)

となります。

その為、今回の例では、確定申告の「所得金額」項目の「給与」に99万円と記載します。
これに合わせて特定支出の領収書および給与支払者(勤務先)からの証明書を添付して申告すれば、特定支出が申告されたと見なされます。

まとめ

特定支出控除は、利用の為のハードルが高い、手間がかかるなどデメリットがあります。
しかし、特定支出と認められる支出の範囲がかなり広いというメリットもあります。

言ってしまえば「この仕事に就いていなければ発生する事はなかった出費」のほとんどは特定支出となるでしょう。
但し、その分の出費を会社が負担してくれるというケースは対象外です。あくまでも「自腹で払った出費」が対象である点に注意して下さい。
もし、普段の業務において自分負担の出費が多いというサラリーマンであれば、その出費の領収書を集めておくという対策を取る事で、税金の節約ができるかもしれません。

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