普通に生活していたら、税金を支払うシーンとしては日々の買い物での消費税や年に一度の固定資産税や住民税、車税くらいでしょうか。
確定申告をしなければならない方は税金の重みをしっかり感じている方も多いと思いますが、一般的な会社員は税金を給料から天引きされていますので、そうそう意識はしたことがない、という方もいるでしょう。
あまり支払う感覚がない方にとっては、税金の滞納と言われてもいまいち実感がないと思います。
しかし、実際には誰でも陥ってしまう可能性があります。
では税金滞納と、滞納してしまった後の一連の動き、更に差押えを回避・解除する方法を紹介しましょう。
税金は支払いが一日遅れただけでも滞納になる
我々日本国民には納税の義務がありますので、税金の支払いは1日遅れただけでも滞納者と呼ばれます。
なので、故意ではないが期日を忘れてしまっていたとか、支払い前に急病で入院する羽目になってしまった、という状態であっても滞納者として扱われます。
ちょっと遅れたくらい大丈夫だろうというのは、税金の支払いなどに関しては通用しません。役所から支払いの督促状や催告書が届いても無視した場合、最悪な結末としては“財産差押え”となってしまいます。
税金は自己破産しても免除にはならない
また、自分は借金が多くてどうしようもなくなり、自己破産しているから大丈夫だろうと、たかをくくっている方もいますが、税金は例え破産していても免除とはなりません。
税金だけではなく、正しくは「租税等の債権」全般で免除されないことになっていて、税金以外では国民年金や国民健康保険、保育料や下水道料金なども免除になりません。
滞納してしまった後の流れを解説
故意であっても故意ではなかったとしても、税金を滞納すれば滞納処分という手続きが行われます。ではその流れを紹介しましょう。
1、督促状が送付される
最初は文書による「税金ちゃんと支払ってください」の催促がきます。これが督促状です。
これが送られてくるのはおおむね、納付期限を過ぎて20日程度(地方税)か50日程度(国税)です。
法律上は、督促状を送った日から数えて10日が経過すれば財産を押さえなければならないと決められているのですが、実際にはすぐ実行とはなりません。
これは最初の立派な警告ですので、この時点で支払うことが大切です。この時には青色や白色の封筒で送付する市町村が多いでしょう。
2、催告状が送付される。訪問や電話もある
督促状を無視していた場合、次は市役所から役人の訪問があったり電話がきたり、催告状が届いたりします。ここまでくると黄色の封筒に変わります。
これがきたら、身辺調査をして財産の有無を調べられると思って間違いありません。
この時点で支払えば、まだ差押えよりは影響が少なくて済みますし、課税分も少なくて済みます。
3、財産調査などをされる
身辺調査では、住民票や勤務先や所得、戸籍と家族構成だけでなく仕事での取引先までが調べる対象となります。財産調査では、給料や報酬、自動車を所有しているかどうか、銀行口座内容や生命保険加入の有無、不動産の確認そして債権や債務の調査などです。
この時調べの対象となるのは本人だけではなく、仕事の取引先までといった周囲全体に及びますので、勤務先や取引先にはこの時点で税金滞納の事実がバレてしまいます。
4、差押え実行
財産調査が終われば差押えの実行となり、差押通知書が送られてきます。この時の封筒は警告の赤色であり、差押えは滞納に対する最終手段として非常に厳しく行われ、一度実行されてしまったら回避する方法はありません。
給料は差押えるにあたって制限が設けられていますが、現金の預金については制限はありませんので、口座にお金があれば全て持っていかれます。そして国税徴収官などは必要に応じて家宅捜索する権利もありますので、自宅に隠されている現金も発見すれば持っていかれます。
差押えの対象にならないもの
- 生活や収入のために必要な道具…衣服や寝具、鍋や包丁などの台所用品、農機具や漁業のための船など
- 家族名義のもの
5、登記と通知手続き
差押えられてしまった財産は、手続きを経て滞納した税金にあてられることになります。
持ち家などの不動産を差し押さえられたのちには差押登記が行われ、利害関係者がいれば「この物件は差押えましたよ」という内容の通知書が送られます。
この時点で全て払い終えた場合は、差押通知書を送付、受け取ることによって一連の流れは完了となります。
6、公売と取り立て実施
もし5の状態で完納とならなかった場合には、インターネットや入札で公売が始まります。さらに納税者が持っている債権についても取り立てが実施され、税金に充当されます。
以上が滞納した場合その後一連の流れです。なお、税金の納付にも時効はあって基本は5年となっていますが、成立することは殆どありません。
国や自治体は悪質な滞納者には目を光らせていますし、督促や催告を行った時点で納税の時効がスタートまで戻されるからです。
もう明日で時効という時に督促状が自宅に届けられれば、時効はリセットされてそこから更に5年となります。
税金の取り立て・差押えをするのはどんな人か
では実際に税金の取り立てや差押えを実行するのは、どんな人なのでしょうか。
国税徴収官(徴収職員) | 法律に基づいて納税を催促する国税局の職員 |
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地方税徴収吏員(徴税吏員) | 自力執行権や質問検査権などを持つ賦課徴収事務に従事する職員 |
一連の業務を実行するのは上記の両職員で、どちらも同じく非常に強い権限を持っています。
例えば…
税務調査をする税務調査官 | 納税者の同意なしには調査が出来ない |
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マルサ(国税査察官) | 強制的に差押えするには令状が必要 |
国税徴収官や徴税吏員 | 同意も令状も必要ない 身分証明書さえ出せば強制的に家宅捜索や差押えが出来る |
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中にはこれは個人情報保護法違反となるのではないか、と考える人もいるようですが、個人情報保護法には抵触していません。
税金を滞納している人の“差押えのための調査”は、国税徴収法141条によって決められている権能の範囲であり、強制力があります。
当然、滞納している原因やその金額によって色々と違いはあるのですが、最短で納付期限から2か月ほどで差し押さえられることもありますので、甘くみないでおきましょう。
差押え回避・解除の方法はあるか
一度実行されてしまうと回避の方法はありませんので、実行される前にやるべきことはやりましょう。
まず支払わないのでなく支払えないのであれば、役所へ相談にいくべきです。その時には支払う意思はあること、そして出来る限りの誠意をみせましょう。
では相談すること以外に滞納者の為となるものはないのか、となりますが、実際に是非知っておいてほしい制度があります。
税金の差押えにおいては納税者の権利を守る制度があり、この制度を「納税緩和処置制度」と言います。
どんなものかというと、中身は「納税の猶予」「換価の猶予」、そして究極的には「滞納処分の執行停止」です。
1、納税猶予の申請書を提出する
納税の猶予の申請書は、最初に滞納してしまった時、もしも払いたくても納税が困難な状況であれば使う手段です。
税金の支払いを「払える額にする」とか「支払いが可能な方法にする」ために出すものです。
役所に分割払いにして下さいと相談・お願いに行くときには、この制度活用と交渉を駆使し、自分が支払い可能な金額にしてもらうようにしましょう。
例えばその時の担当者に相談し、「では分割で支払ってください」と約束をしたとします。それなら何とかなる、と安心していたら、その後担当者が変わると同時に一括返済などに対応が急変することがあります。
なので、相談した時に口約束ではなく、納税の猶予の申請書を提出して1年以内の納税を猶予してもらいましょう。
この制度で猶予が認められれば、延滞税が減額もしくは免除されたりしますし、滞納扱いではなくなりますので自治体の制度融資を受けることも出来ます。
「納税の猶予の申請書」は受け取り拒否が出来ませんので、提出するようにしてください。
2、換価の猶予を利用する
ふと気が付いたら督促レベルにまで到達していたような人は、換価の猶予を利用しましょう。
換価の猶予が認められると猶予期間の延滞税が半額免除となります。利用できるかできないかで、支払う総額はかなり変わってくるでしょう。
また、通常9.1%で計算される延滞税が、年率1.8%で計算されて免除の範囲が拡大します。そして大きなところでは、既に差し押さえられている財産が公売にかけられなくなります。
3、滞納処分執行の停止を申告する
最終段階までいって差押えが実行されてしまった場合は、回避は出来ません。しかし条件によっては執行解除となる場合はあります。つまり滞納処分の執行を停止出来ることもあるわけで、認められた場合は納税義務そのものがなくなります。
申請するものではなく、役所が「この人からはとる財産がない」と判断した時になされるものです。しかし、自分には財産がないし、どうしようもないという場合には自ら申告してみるとスムーズに停止となることがあります。