新型コロナウイルスの影響による収入減などで困窮した会社員をターゲットにした、闇金行為による被害が急増しています。
給料日前に現金を貸す「給与ファクタリング」
横行しているのは、会社員から‟給与を受け取る権利”を債権として買取り、給料日前に手数料を差し引いた分の現金を貸し付ける「給与ファクタリング」と言われる行為です。
現在新型コロナウイルスによる自粛要請や、休業要請などの影響によって困窮した会社員が被害に遭っており、司法書士などに相談が相次いでいます。
業者が「気軽な給料前借り感覚」を謳った広告を出している事もあり、気軽に手を出す利用者が多数いるようです。
給料ファクタリングの仕組み
ある男性は、給料日前に給料のうち8万円分を債権として業者に譲渡しました。
業者は手数料を差引いた分を男性に渡し、男性は5万円の現金を手にしました。その後給料日に返済していましたが、自転車操業となってしまい、支払う事が出来なくなってしまいました。
業者は手数料として3万円を引いていました。金利を計算すると年率は500%を超えることになります。これは利息制限法の上限を軽く超えることになります。利息制限法では、最大20%までと定められています。
給与ファクタリングは‟闇金”と同じ
HPやSNSではクリーンなイメージを謳っていますが、やっていることは闇金(ヤミ金)と何ら変わりありません。
通常ファクタリングとは、「会社」「取引先」「業者」の3つの間で合意のもと執り行われるものですが、給料ファクタリングは「利用者」「業者」の2つの間で執り行われます。
業者は法の網をかいくぐるために貸金業ではないと主張しますが、給料債権の譲渡というのも名目上だけであり、労働基準法では「給与は労働者へ直接支払うもの」としているため、給料ファクタリングは事実上金銭の貸し借りであると言えます。
支払えず自宅に男が来て脅されるケースも
利用者によっては、支払いが滞った際に男が自宅にまで来て脅されたというケースや、「支払えない場合は会社に電話する」と言われたというケースもあります。
その手法は闇金(ヤミ金)と同じで、利用者を追い込んで支払えない場合は家族や勤務先にまで影響が及ぶといった悪質なものです。
気軽に借りるとすぐに首が回らなくなる
HPやSNSなどでは、信用情報であるブラックリストに掲載された人でも利用可能であると謳っていたり、最短5分で融資可能などといった、お金に困窮した人がすぐに現金を手に入れることができることを強調して、利用者を呼び込もうとします。
しかし先程紹介した通り、手数料を金利に換算した場合に年率600%となる場合もあり、気軽に手を出すとすぐに首が回らなくなるのは明白です。
給与ファクタリングは手数料によって利益を出す仕組みであるため、高額な手数料を請求されることが多いのです。
給与ファクタリング業者に返還を求める団体訴訟
そのような中令和2年5月に、違法な高金利で貸し付けをしたとして都内の給与ファクタリング(債権回収)業者を相手取り、約430万円の団体訴訟を提起しました。
令和2年3月には、既に東京地方裁判所によって、給与ファクタリング取引は貸金であるとの判断がなされ、契約は無効、更には刑事罰の対象となるという判決を言い渡しています。
今まで、手数料は高額であっても金利と異なり法律で規制されておらず、貸金業や出資法の網をかいくぐる形での営業でしたが、今後取り締まりは強化されるものと思われます。
給与ファクタリングには手を出さない事が大切
このように、給与ファクタリングは裁判でも既に貸金業法、出資法違反の貸金であると判断されています。
違法なものに手を出す道理などなく、手を出したところで違法に高額な手数料を取られて支払いができなくなることは確かな事だと言えるでしょう。
この大変な時期に困窮して手を出したくなる気持ちもわからなくはありませんが、その場合は合法的な解決策を探ることが大切です。