個人再生と任意整理の違い|小規模個人再生と給与所得者等再生とは?

借金を抱えてしまい返済が困難な場合に、債務整理をすることで借り入れ金額を減額したり返済義務をなくしたりすることができまます。
債務整理は借金や債務者の返済状況によっていずれかを選択することになります。

しかし、実際にはどれくらい借金の返済額を抑える事ができるのか?誰でも手続きできるのか?といった気になる点はいくつかあるかと思います。
そこで今回は、個人再生について詳しく解説していきます。

債務整理について

まず債務整理には以下の4つの手続きがあります。

  1. 任意整理
  2. 民事再生(個人再生)
  3. 自己破産
  4. 過払い金請求

それぞれの違いを簡単に説明すると以下になります。

任意整理・民事再生(個人再生) 返済額を減額し、返済を前提とした手続き
自己破産 借金の返済義務を無くす手続き
過払い金請求 貸金業者に払い過ぎた過払い金の返還請求をする手続き

個人再生(民事再生)とは

個人再生は、この中の民事再生のことを言い、借金などの返済が困難となってしまった人が裁判所に申立てを行って借金を整理する手続きを言います。

個人再生のメリット

  1. 個人再生、任意整理よりも借金の返済額を減らす事ができる
  2. 自己破産のように財産を処分する必要がない
  3. 受任通知送付後に債権者からの取立て・請求・督促が停止する

個人再生は返済額を5分の1にまで減額できるため、任意整理よりも返済が楽になります。
自己破産は借金返済の義務が無くなる代わりに、生活必需品以外の財産は処分しなければなりません。しかし個人再生の場合は、住宅や車などの資産価値があるものも手放さずに手続きができる場合があるというメリットがあります。

また貸金業者は、弁護士や司法書士からの受任通知を受け取った後に債務者に連絡を取る事は禁止されているため、請求や取立ては停止することになります。このため精神的にも安定して返済手続きができます。

個人再生のデメリット

  1. 信用情報に個人個人再生をしたことが掲載される
  2. 官報に掲載される
  3. 裁判所に申し立てをする必要がある

信用情報

信用情報とは一般的にブラックリストとして知られるもので、これに個人再生をしたことが掲載されます。掲載される期間は5~10年で、掲載されている期間中は新たな借り入れはできません。

官報

官報とは国が発行する新聞のようなものです。法律の制定や個人の裁判の内容も掲載されるため、個人再生の手続きをすると個人情報(名前・住所・手続きの内容)が掲載されることになります。
このため個人再生をすると、第三者に手続きをしたことや個人情報を知られる可能性があります。

任意整理とは違って申立書を提出する必要がある為、手続きには書類などを集める手間がかかります。このため弁護士や司法書士などの専門家に依頼して手続きを進めた方がよいでしょう。手続きに手間がかかる反面、裁判所を通すことで法的に借金を減額する事ができます。このため任意整理よりも借金の返済負担を抑える事ができます。
一見デメリットと思えることでも、裏を返せばメリットとなることもあるため、自分にあった手続きを専門家と相談して決めると良いでしょう。

あくまで借金が減額されるだけなので、返済義務がなくなるという訳ではありません。
基本的には減った借金を3年、特別な事情があれば5年をかけて返済していく事になります。

個人再生でどれくらい借金が減るのか

個人再生によってどれだけ借金が減るかは、民法で定められた最低弁済額の基準、または精算価値保障の原則によって決まります。

最低弁済額の基準とは

最低弁済額とは、その名の通り最低限返済すべき金額の事であり、これは民事再生法によって定められています。この最低弁済額は借金の金額によって変わります。基準は以下の通りです。

100万円未満 全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円未満 10分の1

このように、最低弁済額は借金が多額になればなる程、返済の負担を抑える事ができます。このため個人再生は多額の借金を抱えて返済困難となってしまった債務者に効果的な手続きです。
但し、個人再生は5000万円を超えた場合は手続きを行う事ができない為、この場合は一般の民事再生または自己破産手続きを進める必要があります。また、100万円未満の場合、個人再生で借金が減る事は無い為、この場合は任意整理の方が向いています。

精算価値保障の原則とは

精算価値保障の原則とは、債務者が所有している財産分の金額は返済をしなければいけないという決まりです。
簡単に説明すると、300万円の価値がある車などの財産を債務者が所有していた場合、個人再生では300万円までしか減額する事ができないという事になります。

なお、個人再生では最低弁済額精算価値保障の原則のうち、返済額の多い方が適用されます。
例えば、借金の総額が500万円あった場合、最低弁済額の基準に則れば100万円まで減額する事ができますが、もし300万円の財産を所有していた場合は精算価値保障の原則が適用され、借金は300万円までしか減額されない事になります。

「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類が存在しています。

小規模個人再生とは

個人再生と言われれば基本的には小規模個人再生の事になります。
大きく減額されることで、利用されやすい傾向にあります。

裁判所に再生計画案を認可され、債権者からの同意を得ることで、借金を最大90%減額して残った借金を3年で返済していく手続きです。

小規模個人再生の利用条件

  • 借金が5,000万円以下である
  • 継続した収入が見込める
  • 収入のある個人

総規模個人再生の支払額

小規模個人再生では、以下のどちらか高い方の金額にまで借金を減らすことができます。

  • 民事再生法の定める最低弁済額
  • 債務者の総資産合計額

民事再生法の定める最低弁済額まで減額される場合、借金返済総額が5分の1~10分の1程度にまで減額されます。ただし100万円未満に減額されることはありません。
裁判所によって認可されると、支払いが3年から5年の分割払いにすることができます。基本的に毎月1回の返済ですが、3ヶ月に1回にすることも可能です。

給与所得者等再生とは

給与所得者等再生は、正社員や公務員といった収入が安定している人を対象とした個人再生手続きとなります。
小規模個人再生の場合、再生計画の提出において、それに借入先である金融機関(債権者)等が過半数反対した場合、個人再生は成立しません。

これに対し、給与所得者等再生は再生計画の提出において債権者の同意や不同意の手続きが省け、裁判所が再生計画を認可してくれます。
但し、可処分所得弁済要件が設けられているという特徴もあります。

給与所得者等再生のメリット

  • 債権者の同意が不要で
  • 全債権者が反対したとしても再生が認可される

給与所得者等再生のデメリット

  • 支払額が小規模個人再生よりも多くなる可能性がある
  • 収入に関する条件が小規模個人再生よりも厳しい

可処分所得弁済要件とは

給与所得者等再生では、借金をいくら減額するかを決める基準に最低弁済額精算価値保障の原則に加え、「可処分所得の2年分」が設けられます。
可処分所得とは、給与や賞与の所得から、税金や社会保険料を引いた自分の意思で自由に扱う事ができる所得、いわゆる「手取り」の事です。
給与所得者等再生では、この手取り額よりも借金を減らす事はできません。
この可処分所得の2年分が、最低弁済額と所有している資産の総額より高額となってしまうケースは多い為、小規模個人再生よりも支払額が多くなってしまう可能性が高いというデメリットが存在しています。

小規模個人再生と給与所得者再生のどちらを利用すべきか

給与所得者等再生はあくまで安定した収入のある正社員や公務員を対象にしているというだけであり、自分に不都合であると判断した場合は、正社員や公務員でも小規模個人再生を選択して手続きを行う事ができます。
その為、もし可処分所得が低い場合や再生計画案を何としても押し通したい事情がある場合は給与所得者再生、できる限り返済額を抑えたいという場合は小規模個人再生、判断が難しいという場合は弁護士に相談して検討してみると良いでしょう。

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