今までに一度も借金をしたことがない方でも、一度は聞いたことがある言葉が「連帯保証人」ではないでしょうか。これだけは絶対になるなよ!と両親から言われて育った、という方もいると思いますが、その内容はしっかりと理解していますか?
ここでは、借金の連帯保証人になることで生まれる責任とリスク、注意点、そして保証人との違いなどを紹介していきます。
金の切れ目が縁の切れ目、といいますが、どんなに親しい人でもお金の貸し借りだけはしないようにしてください。いかに親しい人から頼まれたとしても、自分や家族の生活を守りたいならはっきりと断るべきです。
地獄への入り口「連帯保証人」
あなたがもし誰かの連帯保証人になってしまったら、そのハンコを押した時から地獄の入り口に立ったと思っても大げさではありません。
これは勿論比喩ですが、そのくらい悲惨な人生が待っている、とイメージしておいてください。
借金を作った人本人が返済できなくなった場合に、借金を肩代わりする人 = 連帯保証人です。
借金をした人と、あなたは一心同体とまではいかなくても、相手が借金を全て返済するまで常に繋がっていると考えておくべきです。
借りた本人はお金を手にして色んなことが出来ますが、あなたはお金を手に入れることなどなく、万が一の時には逆に支払う必要がある立場となってしまうのです。
人の信用とはあってないようなもので、もろく崩れやすいものでもあります。
その人物を信じて連帯保証人になっても、相手と連絡がつかなくなって人の借金の返済に追われるということは意外とよくあることです。
保証人と連帯保証人の違い
もしもあなたが誰か親しい人や、会社での濃い付き合いがある人に、「保証人になって欲しい」とお願いされたとします。
当然ここではっきりと断るべきですが、そう無碍にも出来ないという相手である場合、これだけはしっかりと確認してください。
「それって、保証人ですか?それとも連帯保証人ですか?」まずはこの点をチェックしましょう。
どちらも「保証人」という言葉がつくことから、同じだと思われがちですが、実は全く違います。
保証人と連帯保証人は、大きな3つの違いがあります。それを知っておいてください。
1、催告の抗弁の権利
借金をした人が返済できず、逃げてしまった場合に、金融会社があなたに対して「お金を返せ」と言ってきたとき、「まずは借りた人に言ってくれ」という権利を催告の抗弁権といいます。
催告の抗弁権
- 保証人…ある
- 連帯保証人…ない
2、検索の抗弁の権利
借金の返済がなされない場合、金融会社は手続きを踏めば財産を差し押さえることが出来ますが、その前に「先に借りた人の財産から差押えてよ」という権利を検索の抗弁権といいます。
検索の抗弁権
- 保証人…ある
- 連帯保証人…ない
3、分別の利益
借金総額が400万円で、保証人を引き受けた人が4人いたと仮定しましょう。
すると負担しなければならない金額は1人100万円となり、それ以上は支払わずに済みます。
つまりは保証人の数によって、負担額が減少することです。これを分別の利益といいます。
しかし連帯保証人の場合は、分別の利益がないため負担額が減少しません。そのため400万円すべてが請求される可能性が大きくなります。
分別の利益
- 保証人…ある
- 連帯保証人…ない
ただの「保証人」の頭に「連帯」とつくだけで、これだけの違いが発生してしまいます。いずれも大きな違いですので、どうしてもと頼み込まれたらまずは「連帯」の文字がつくのかどうかは確認し、その後、はっきりと断りましょう。
一度なってしまったら辞めることができない
頭に「連帯」のついた連帯保証人になってしまった場合、残念ながらあとから連帯保証人をやめることは出来ません。
そして、連帯保証人として借金返済の責任を取る時には、返済は一括で行うことが決まっています。数十万円や数百万円なら何とかなる、という方もいるかもしれませんが、それが数千万単位となれば、一括で返済するのは無理でしょう。
となれば、やるべきことは「債務整理」です。
債務整理の中には「任意整理」というものがあり、一括なら無理だけど分割なら何とか払える、という場合に金融会社と交渉することになります。向こうも自己破産されたら借金が帳消しになってしまいますので、何が何でも一気に支払え、とは言いません。
それでもどうしても支払えない、となれば、デメリットは色々と大きいですが最終手段として自己破産という選択もあり得ます。
どちらも単独で手続きをするには難しいので、専門家に依頼する方がスムーズにいきます。
時効援用の条件
保証人になってしまったのは間違いないけれど、場合によっては借金を返さずに済むことあります。それは、借金そのものが時効を迎えていた場合です。
請求をしてきた金融会社に対し、「この借金は時効を迎えていますので、返済する意思は私にはありません」と宣言する必要があります。そうすれば例え連帯保証人でも返済しなくてもよくなります。
しかし、これには条件があります。
- 借金の時効期間が過ぎている
- 借金の時効期間の間、自分が「債務の承認」を一度もしておらず、一部でも返済していない
- 借金の時効期間の間、金融機関(債権者)から「裁判上の請求」をされていない
- 時効の援用の意思を示す
「債務の承認」とは、一部を少額でも返済した(一部弁済)、ボーナスまでまってくれたら支払えるなど返済の意思を前提にして交渉した(支払い猶予願)、返済のため毎月の可能額など具体的に伝えた(返済の意思表示)となっています。
裁判所の請求とは、訴訟や支払い督促手続きを行うことです。その場合、時効は中断され、新たに時効期間がスタートしてしまいます。
また、本人が上記の条件を満たしている場合には、連帯保証人が本人に代わって時効を援用することが出来ます。詳しくは、弁護士や司法書士などのプロに相談してください。
無効・取り消しに出来る場合もある
一度なってしまったら辞められないのが借金の連帯保証人ですが、次の4点のような場合には契約を無効に出来る可能性があります。
- 未成年であること
- 勝手に契約されていたこと
- 詐欺によってなされていたこと
- 勘違いなど
特に最初の未成年である場合、判断能力が不十分であるとみなされますので単独での法律行為が認められていません。ですから、本人もしくは代理人が契約を取り消すことが出来ます。
次の、勝手に保証人にされていた、というケースでは、とにかく1円も支払ってはいけません。支払うことで「認めた」ことになりますので、請求がきて焦るのは分かりますが、絶対に支払わないようにしましょう。そしてすぐに、弁護士などに相談してください。
保証人にはなったけれど、内容が最初と違っている、というような場合には「詐欺」として契約を無効に出来る場合もあります。そして勘違いをしていたケース、これら二つのケースも、まずは専門家へ相談してください。
連帯保証人が死亡した場合
実際によくあるケースとしては、亡くなった父親など、身内が保証人になっていたというケースです。死去した家族が借金の保証人になっていたという場合、返済義務はどうなるのでしょうか。
基本的には、財産を相続する相続人が保証人という立場も引き継ぐことになります。つまり父親の財産を引き継ぐ母親が今度は保証人となる、ということです。
ただし、相続の開始を知ったときから3か月以内であれば、連帯保証人になることを相続放棄出来る可能性があります。これは民法の915条に書いてありますので、慌てず専門家へ相談して対処してください。
とにかく断ってそれを明言しよう
連帯保証人が必要なケースは事業を起こすなどの大きなこと以外でも沢山あります。一般的なところでは部屋の賃貸契約なども当てはまります。
数万円のことであれば、とか、人間関係もあって簡単には断れないケースもあるとは思われますが、とにかく「連帯保証人には絶対になれない」と明言することが大切です。お茶を濁すような言い方をすれば誤解され、ややこしくなってしまうこともあります。
なれないものはなれない、とはっきり言うことしか、自分の身を守るすべはありません。
これで切れてしまう人間関係なら、それまでのことだったと思うようにしましょう。また、自分に保証人が必要となってしまった時があれば、親や兄弟姉妹、友人などに頼むことはやめましょう。絶対返済するつもりであっても、病気や不慮の事故など、何がもとで計画通りにいかなくなるかわかりません。
保証人がいなければ保証会社に依頼することも出来ますので、人にどうしてもと頼まれた時には「自分はなれないがそういう会社があるよ」と教えるくらいにしておきましょう。