これからお金を借りようと考えている方は貸金業法を把握しておく必要があります。
貸金業法を知っておくことで、正しくお金を借りられるだけでなく、債務額の計画を立てられるかもしれませんしあなたの身を守ることもできるかもしれません。
またグレーゾーン金利で借りていた場合は、過払い金としてお金が戻ってくることもあります。
この記事では、貸金業法とはどんなものか、借りる側が知っておくべきことについて解説します。
貸金業法とは
貸金業法とは、借り入れをする消費者を多重債務や高額な借り入れから守るために定められた法律です。
貸金業法によって債務者側の多重債務や過剰な借金になってしまう状況を未然に防ぐことができるようになります。
貸金業法が制定されたことで、以下のことが取り決められました。
- 貸金業への登録要件の強化
- 債務者側の借入可能額
- 貸金業者側の上限金利
- 貸金業者への規制
- 闇金融への取り締まり強化
ここからは、それぞれの項目について解説します。
貸金業者の登録条件
貸金業法によって、貸金業を営む場合は内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければいけません。
貸金業者として登録するためには以下の条件等を満たす必要があります。
- 営業所もしくは事務所を構えており、固定電話を設置している
- 各営業所(事務所)に貸金業務取扱主任者(国家資格である貸金業務取扱主任者資格試験に合格した者)を設置できる
- 純資産額が、5,000万円以上である
- 役員の中に貸付業務に3年以上従事した人がいる
- 営業所(事務所)ごとに貸付業務に1年以上従事したことがある従業員がいる
これらを満たした上で、貸金業者として登録の申請をしないといけません。
総量規制により消費者の借り入れ上限額が決められている
債務者側が過度な借り入れをすることが無いように、貸金業法では債務者の年収に応じた借入可能額が決められています。
これを総量規制と言います。
借入可能額は年収の3分の1
借入可能額は年収の3分の1と決められています。
つまり、年収600万円の人は、200万円までしか借り入れが出来ないのです。
しかし車や住宅を購入する場合、この金額に収まりきらない借り入れをすることが出てきます。
そのようなときは、例外貸付と言って指定されたものは総量規制に含まれずに借入することが出来ます。
例外貸付
借り入れできる金額は、年収の3分の1と決められていますが、以下の項目についてはその額から除外することが出来ます。
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 高額医療費貸付制度を利用した貸付
- 有価証券(株式・債券・手形・小切手等)を担保とする貸付
- 不動産を担保とする貸付
- 売却予定不動産の売却代金によって返済される貸付
住宅や自動車など高額な買い物によって生じるローンは総量規制から除外されます。
また、担保がある貸付や返済の当てがある貸付についても、例外貸付として認められています。
上限金利の制定
金額ごとにおける上限金利
貸金業法及び利息制限法によって、貸金業者が設定できる金利の上限も貸付額に応じて決められています。
現在の貸金業法では、以下のように金利の上限が定められています。
- 10万円未満⇒上限20%
- 100万円未満⇒上限18%
- 100万円以上⇒上限15% (金利はいずれも年利)
この上限を超えた金利で貸し付けをした場合は無効になるとともに、貸金業者側へ刑事罰の対象となってしまいます。
グレーゾーン金利について
先述の上限金利が制定されたのが2010年6月ですが、それ以前の上限金利は法律によって異なっていました。
- 利息制限法⇒年利20%
- 出資法⇒年利29.2%
グレーゾーン金利とは、出資法の上限金利と利息制限法の上限金利の間にあたる金利のことです。
現在では年利20%以上は処罰の対象です。
しかし、以前は出資法の上限金利が29.2%に設定されており、これを超えなければ、刑事をに課せられることはなかった上に、貸金業法上の「みなし弁済」の規定により、一定の要件を満たせば、20%から29.2%の間の金利の支払いについても有効とされていました。。
そのため大半の貸金業者は29.2%以内の金利で貸し付けを行っていました。
2009年12月19日に貸金業法における「みなし弁済」規定が廃止され、さらに2010年6月18日に出資法の上限金利が20%に改正されてからは、このグレーゾーン金利は撤廃されています。
貸金業法が制定された2010年6月以前にグレーゾーン金利で借り入れをしていた場合は、グレーゾーン金利によって払い過ぎた利息の部分は「過払い金」として払い戻しをしてもらうことが可能です。
もしグレーゾーン金利による借り入れを行っていた場合は、払い過ぎたお金が戻ってくる可能性が高いので、弁護士や認定司法書士に相談してみましょう。
収入証明の書類が必要
総量規制の項で解説した通り、消費者が借入れ出来る上限は年収の3分の1と決められています。
そのため、消費者の返済能力を証明するために、借入する際には収入証明の書類が必要になります。
収入証明が出来る書類は以下のものです。
- 源泉徴収票
- 支払調書
- 給与明細書(直近2ヶ月分以上が必要)
- 確定申告書
- 青色申告決算書
- 収支内訳書
- 納税通知書
- 納税証明書
- 所得証明書
- 年金証書
- 年金通知書
これらの書類を提出することで、貸金業者があなたの返済能力を認識し、貸付を行うことが出来るようになります。
貸金業者に対する規制
貸金業者に対して貸付金の取り立て方法の規制や禁止行為の制定がされています。
貸付金取り立ての際の禁止行為
貸付金の取り立てに当たって、以下の行為は禁止であると貸金業法で明記されています。
- 深夜~早朝に電話・訪問をする
- 自宅以外(消費者の勤務する職場など)に電話・訪問をする(職場の場合、業務妨害罪)
- 消費者のところへ訪問した際に、退去の要求を拒否する(不退去罪)
- 借金をしているという事実を周囲に拡散する(名誉棄損罪)
- 他社からの借金で返済するように要求する(強要罪)
- 債務整理開始の通知後に督促を行う
これらの行為をしてしまった場合、違法行為として刑事罰の対象となります。
貸金業者から違法な取り立てを受けた場合
現在は法律によって違法行為が厳しく定められていますが、それでもあなたが貸金業者から違法な取り立てを受けてしまう場合もあるかもしれません。
そのような状況に遭遇したら、まずは警察、弁護士に相談してみましょう。
暴力行為や業務妨害等、犯罪に当てはまるようなことであれば警察が動いてくれます。
また違法行為でも犯罪には当たらなそうな場合は、弁護士や消費生活センターに一度相談してみてはいかがでしょうか。
指定信用情報機関に貸し付け情報が登録される
貸金業法で貸し付けの上限額が「年収の3分の1」と決められたことから、指定信用情報機関で借り手の借入額を把握できるようにしています。
これによって貸金業者が消費者に貸し付けを行う際は、指定信用情報機関に問合せをして、返済能力を調査する必要があります。
指定信用情報機関について
指定信用情報機関とは、信用情報機関の中で内閣総理大臣から指定を受けた信用情報機関のことです。
指定を受けるにあたって条件が設けられており、一例として以下の項目が設定されています。
- 法人である
- 貸金業法、個人情報保護に関する法律に違反していない
- 加入している貸金業者の数が100以上
- 貸借対照表に計上された純資産額が5億円以上
- 保有する個人信用情報に掛かる貸付残高の合計が5兆円以上
他にもあるのですが、このような厳格な条件を満たすことで、指定信用情報機関として認められます。
現在、指定信用情報機関に認定されている機関は、JICC(株式会社日本信用情報機構)とCIC(株式会社シー・アイ・シー)の2社のみとなっています。
JICC:https://www.jicc.co.jp/
CIC:https://www.cic.co.jp/index.html
指定信用情報機関からの開示について
複数の消費者金融などから借り入れを行っている場合、どこにいくら借りたのか、把握が出来なくなることもあると思います。
そのようなときは、指定信用情報機関に自身の情報開示を求めれば、開示してくれます。
一例としてJICCの場合、開示手続きはスマホ、郵便、窓口から受付が可能です。
いずれの方法でも、本人確認書類・開示手数料(1,000円)が必要となります。
闇金融への罰則強化
貸金業法によって貸金業者への審査が厳格になったことで、闇金融への罰則が一層強化されるようになりました。
闇金融とは、国や都道府県に貸金業の届け出を行っていない、貸付業者のことです。
もし貸金業の届け出を行わずに貸付を行った場合、5年以下の懲役・1千万円以下(法人は1億円以下)の罰則が科せられます。
さらに上限金利を上回る利息で貸し付けを行った場合も5年以下の懲役・1千万円以下(法人は3,000万円以下)の罰則となります。
【まとめ】貸金業法について
貸金業法について、まとめます。
【貸金業法とは】
- 貸金業務を行う場合、一定の条件を満たした上で登録を受けないと営業することが出来ない。
- 総量規制として消費者が借り入れできる金額は、年収の3分の1までと決められている。
しかし自動車・住宅ローンや担保を用いた借入の場合は、総量規制の例外として認められる
- 上限金利が最大で年利20%と決められている
- 貸金業者が消費者に取り立てをする際は、違法行為が明確に決められている。
それらを犯した場合は、刑事罰に処されることもある
- 消費者の借入額等を把握できるように、指定信用情報機関に登録されている。
消費者が自身の借入額を把握したい場合、ここに情報開示請求をすれば借入額等を教えてもらえる。
借りる側のあなたも貸金業法について知っておくことで、借り過ぎることを防いだり、またもし違法な取り立てに遭遇した場合に異を唱えたりすることが出来るかもしれません。
お金を借りる以上は、お金を借りるための法律を知っておきましょう。