破産者マップは何が問題だったのか?閉鎖した経緯と自己破産について

2019年3月の中旬ごろ、破産者マップというサイトが開設されました。
プライバシーの面から騒ぎになり、数日後には行政指導が入ってサイト開設から数日後に閉鎖されました。

今回は破産者マップの経緯を見ると共に、破産とはどういうことなのかについても共にご紹介していきます。

破産者マップって何?

破産者マップとは、サイトの管理者が官報の情報を元に、破産者情報をGoogleマップと関連させ、破産者の氏名や住所などの個人情報をマップ上で見られるようにしたサイトの事をいいます。
地図上のピン(目印)があり、直近3年間破産した人の住所や氏名、官報の公示日などが閲覧できる状態となっていました。

2019年3月中旬ごろ、サイト運営者が公開したことでネット上にて注目を浴び、数日後にはサイトの閲覧数が膨大な数になりました。
このため公開後サーバーがたびたびダウンする状況となります。

またプライバシー権侵害にあたるのではないかと物議をかもし、弁護士による「破産者マップ被害対策弁護団」が結成される事態にまで発展。
メディアもこの経緯を大きく取り上げ、さらに広く世間に知れ渡る事となりました。
こうした状況をうけ、サイト運営者がツイッター上で謝罪の上、サイト開始から数日後には閉鎖するに至りました。

官報に掲載される破産者情報とは?

破産者マップは官報をもとに製作されました。
官報とは国が発行している情報誌のようなものです。
発信されるものは以下のようになります。

  • 法律や条約の公布
  • 国や各地方団体からの公告
  • 裁判所の公告
  • 公務員の人事異動や司法試験の合格者などの発信

裁判所で破産申請が決定されると、破産者の氏名や住所、破産手続きをした裁判所や日時などが掲載されます。

官報は、行政機関の休日を除き毎日発行され、当日分については国立印刷局や東京都官報販売所に提示され、特定の販売所で購入することも出来ます。過去の分については、公立図書館に置いてあるほか、インターネット上から見る事も出来ます。

インターネット上では、無料で直近30日分が閲覧でき、過去の分から直近までの分は会員登録することで有料にて見ることが出来ます。

サイト運営者が破産者マップを作成した理由

破産者マップのサイト運営者は、マップを作成した理由と次の通りに述べています。

  1. 破産された方の社会的救済のために作成。
  2. 官報というごく限られた特定の人にしか見ない破産者情報を、より広く簡単に検索できるようにすることで、自分の身近にいる破産者を助けてほしいという気持ちから作成した。

破産者マップは何が問題だったのか?

破産者マップの問題は、第三者が個人のプライバシーにかかわる部分を簡単に閲覧できたことでした。
破産という人に知られたくない情報が、関連付けをしたGoogleマップのピンをクリックするだけで、破産者の氏名や住所、管轄の裁判所などが簡単に閲覧できる状態でした。

通常官報はごく限られた人しか購読しない情報誌です。
目的があって、その情報が必要な人が見るものです。

しかし破産者マップはインターネット上のマップをクリックするだけで、安易に破産者の個人情報が閲覧できる状況だったため、プライバシーの侵害や名誉棄損に当たるのではないかということで大いに批判を浴びました。
またこのサイトが悪用され、ヤミ金融業者へ渡り、詐欺被害や子供のいじめなど、再起をめざす本人や家族の生活を脅かす被害を生むことが懸念されました。

炎上騒ぎとなった世間の批判に対してサイト運営者の意見は?

サイト運営者は、破産者の情報はすでに官報に掲載されていて、インターネットや図書館などでも見ることが出来ており、すでに公開されている情報を、より多くの人に見やすいように広めているだけで、当サイトが名誉棄損には当たらないと反論しています。

また、サイトの運用が悪用され、破産者がさらなる被害にあってしまうという、破産者救済目的から外れた使われ方をされており、非常に残念だという意見を述べています。

破産者マップ削除申請がさらなる被害を生む

この破産者マップでもう一つ問題となったのが、削除申請です。

サイトの運営者がサイト上に削除申請フォームというものを作成し、情報の削除を依頼する場合、削除申請フォームに氏名や住所、破産した理由、現在の生活状況など詳細な情報を入力し、運営者の審査を通った場合に削除を行うと言うものでした。

削除申請フォームの内容があまりにも詳細に記入しないといけないことから、こうした情報が悪用されるのではないかと、批判の声がさらに強くなりました。

実際に、「破産者マップからの削除は有料です」などといって、お金をだまし取ろうとする詐欺被害も出ており、サイト運営者がツイッター上で削除は無料で行っていて、削除に料金を取るということは無く、詐欺にはひっかからないように呼びかける事態になりました。

個人情報保護法違反による行政指導でサイト閉鎖へ

破産者マップ開設後、名誉棄損やプライバシーの侵害に当たるのでないかと批判が殺到しましたが、大きな焦点になったのが個人情報保護法違反でした。

破産者マップは、官報で紙面やネット上ですでに発信されているデータを元に作成されており、このサイト上に掲載されたからといって名誉棄損には当たらないというのが、サイト運営者の意見でした。

ところが、60人の弁護士団が連名で行政機関である個人情報保護委員会へサイト運営者に対し緊急命令を出すように3月18日に申入れを行い、それに伴い行政指導が行われ、サイト運営者より翌日の3月19日にサイトは閉鎖すると発表されました。

個人情報保護規定違反とは?

弁護士団が、個人情報保護委員会へ申し入れを行った個人情報違反についてですが、破産者マップのどの部分が違反に当たるのでしょうか。

第三者への提供制限違反

まず、一つ目としては、個人情報は第三者への提供には制限があり、一部の場合を除き第三者へ提供してはならないこととなっています。

官報で公告された破産者の氏名や住所、破産申告をした日付などの個人情報をグーグルマップ上と連動させたことは、第三者への提供になり破産者マップに載った本人の同意が必要ですが、サイト運営者はこれを行っておりませんし、第三者へ提供の除外項目にも当てはまりません。

オプトアウトが不適切

二つ目としては、個人情報は本人の申し出により、第三者への提供をストップすることとなっています。(ただし、あらかじめ本人への申し出があり、いつでも本人が知ることが可能な状態で、個人情報保護員会へ届出済みの場合を除く)

サイトの管理者は、削除申請フォームの中で、氏名や住所だけではなく、現在の生活状況などオプトアウトに必要のない情報まで記入要請があり、不適切だと言われています。

サイトの利用目的が公表されていない

破産者マップサイト運営者は、破産者の個人情報の利用目的を公表しておりません。

以上、上記のことから、個人情報保護違反に該当するとのことで行政指導があったこと、時をおなじくして、弁護士集団より個人情報保護委員会へ緊急命令の申し出があり、これを受けて破産者マップ運営者は、緊急命令の翌日3月19日にツイッター上でサイトを閉鎖することを伝えました。

破産者マップから見る自己破産とは?

破産者マップでは、破産した人の個人情報が簡単にマップ上で検索できるにしたことで、大きな批判を受けました。

過去に破産をしたということは、あまり人に知られたくないことですが、何らかの理由で多額の借金を背負ってしまったとき、借金の債務整理のうちの一つに自己破産というものがあります。

自己破産とは

自己破産とは、借金が多額で返却が出来ない状態になったとき、債務者(借金を負った人)が裁判所にて手続きを行い、借金を返済する義務を免除されることが許可され、借金を支払う義務がゼロになることをいいます。つまりは返済しなくても良くなるということになります。

自己破産を行う場合は、審査を行う中で、現在含めこれから先も借金を返済することが不可能だと判断されることが条件です。
車や家など大きな資産(約20万円)や財産は返済に回されるなど手放さなければなりません。
自己破産を行う場合、司法書士などの専門家に依頼して手続きをしてもらう事になります。
生活保護を受けている等、手続きを行った司法書士に報酬を支払えない場合でも法テラスにて対処してもらい、結果的に債務者の費用負担無く利用できることもあります。

自己負担のメリット

  1. 借金がゼロになる
  2. 手続きが始まると債権者(金融機関など)からの返済催促の連絡がストップする
  3. 財産の差し押さえなどの強制執行が行われなくなる

自己負担のデメリット

  1. 信用情報機関(ブラックリスト)に破産したことが5年~10年は掲載される
  2. ブラックリストに載っている間は、新たな借金はできない
  3. 一部の職業や資格(弁護士や司法書士など)に制限がかかる
  4. 官報に氏名や住所、破産手続きをした日時などが掲載される

また、ギャンブルや浪費などが原因の場合は、免責が認められません。
つまりは自己破産が行えない場合があるということです。
その場合は他の任意整理など他の方法で債務整理を行う事となります。

まとめ:破産者マップから学ぶこと~借金で困った時は専門家へ

いかがでしたでしょうか。
破産者マップがどのようなサイトだったのか経緯や問題点などと共に、自己破産についても併せて説明してきました。

破産者マップを通して、あらためて破産借金とは何かということを考えさせられました。
もし、多額の借金を抱えて困っている場合、専門家に早めに相談へ行くことで、自分にあったアドバイスを受けることが出来ます。

困った時は司法書士などの専門家へ早めに相談へ行くようにしましょう。

よく読まれている記事