自分の所持金よりも大きい取引が出来るレバレッジ取引ですが、失敗すれば非常に大きな借金を作りかねないです。
ではレバレッジ取引によって借金を背負う場合とはどんな状況でしょうか。
この記事では、レバレッジ取引によって借金を作ってしまう4つのケースを解説するとともに、背負ってしまった借金を対処する方法について、解説していきます。
レバレッジとは
まずレバレッジの意味について解説をしていきます。
レバレッジの語源は、英語の「てこ(lever)」から来ており、小さな力で大きなものを動かせるという意味から来ています。
“レバレッジ取引”といって投資の場でよく使われる言葉で、自分の所持金よりも大きな取引をすることが出来るようになります。
他人の資本を利用して大きな取引が出来る
レバレッジを掛けるとは、他人の資本を利用することで自分の所持金だけではできない、大きな取引をすることです。
例えば、自己資金100万円で行う事業の利益が10万円である場合。
- 自己資金100万円のみ⇒売上100万円+利益10万円
- 自己資金100万円+他人資本200万円(総資金300万円)⇒売り上げ300万円+利益30万円
上記のケースの場合、自己資金だけで行った場合に比べて20万円利益を増えることになります。
このように、他人資本を用いて利益を大きくすることをレバレッジ取引と言います。
目的は資産を増やすこと
レバレッジ取引の最終目的は、資産を増やすことです。
先述の事業取引の例で挙げたように、他人資本を用いることでより大きな取引が出来るようになります。
それによって利益も大きくなり、さらにその利益を基に大きな事業を手掛けることが出来ます。
そしてゆくゆくは自己資本が増える=資産が増えることとなります。
このようにレバレッジ取引は資産形成を手っ取り早く行う手段になりますが、一方で莫大な借金を背負ってしまうリスクもあります。
レバレッジの借金リスク
レバレッジ取引が成功すれば資産を増やす近道となります。
その反面、取引に失敗してしまうと借金を背負ってしまいます。
先述の例に挙げた、自己資金100万円+他人資本200万円の事業の場合について見てみます。
成功した時に売り上げ300万円+利益30万円という風に利益が出ればいいですが、売り上げが伸びずに売上250万円に留まってしまったとします。
その場合、利益は0円、赤字が50万円ということになり、借金を背負ってしまいます。
このように、他人資本に頼るということは、借金を背負うリスクも隣り合わせである取引がレバレッジです。
レバレッジで借金をしてしまう4つのパターン
では実際にレバレッジ取引によって借金をしてしまう時のはどんな時でしょうか。
ここでは4パターンについてそれぞれ解説していきます。
FX(外国為替取引)
まずよくあるのが、FX(外国為替取引)におけるレバレッジ取引です。
日本ではFXのレバレッジ取引は最大25倍まで認められています。
FXは他の投資と違って為替変動が激しいため、損失もその分大きくなる可能性が高いです。
そのため、レバレッジ取引をしているときに為替変動に遭遇してしまうと、大きな損失をもたらしてしまいます。
ちなみにFXには“ロスカット”と言って、証拠金(FX口座に預けている自分の所持金)が一定額以上下がると、強制的に決済される仕組みがあります。
この制度によって大損を防ぐことが出来るのですが、レバレッジの倍率を上げているほどロスカットが効かなくなり、多額の借金を背負うことになります。
例えばレバレッジ15倍、証拠金100万円で1ドル=100円で取引をしているとします。
この時に変えるドルは100万円×15倍÷100円=15万ドルとなります。
しかし為替変動により1ドル=90円に下落してしまった場合、損失額は
15万ドル×(100-90)=150万円
損失額が証拠金の100万円だけでは賄えないため、差額分の50万円の借金を背負うことになってしまいます。
不動産取引
不動産取引においても、レバレッジ取引はあります。
自己資金500万円で購入した物件が年間家賃収入40万円を生み出す物件を買うよりも、自己資金500万円に他人資本1,000万円借りて合計1,500万円の総資産で年間家賃収入120万円を生み出す物件の方が高い利益になります。
しかし、お金を借りた場合には必ずと言っていいほど利子が発生します。
そこに掛かる利率が大きくなった場合、借金が膨らむ金額も二次関数的に大きくなります。
それだけでなく、思うように家賃収入が確保できずに赤字になるというケースもあり得ます。
家賃収入を生み出せない物件では他人資本のお金は返済できなくなるので、借金に繋がってしまうのです。
株式信用取引
株式においても、“信用取引”という形で取引をすれば、レバレッジを利かせられます。
株式信用取引とは、現金や自分が保有している株式を担保にして証券会社からお金を借りて株式の売買をする取引のことです。
株式信用取引で借金を背負うというのは、株価下落による損失額が、証券会社に補償金としていた自己資金を上回った状態のことです。
- 自己資金100万円のみで運用していた株価が1/2に下落⇒50万円の損失になり、自己資金は50万円に減る
- 自己資金100万円を担保に300万円で運用していた株価が1/2に下落⇒150万円の損失になり、自己資金で相殺しきれないため、差額の50万円の負債を背負う
自己資金だけの運用であれば、所持金がゼロになることはあっても、借金をするようなことはありません。
しかし信用取引によるレバレッジを利かせた場合、上記のように損失価格>自己資金となることで借金を背負ってしまいます。
商品先物取引
商品先物取引においても、レバレッジ取引による借金リスクがあります。
商品先物取引とは、原油や白金などといった商品(モノ)に対する先取り取引(商品が値上がりすることを読んで取引する)です。
商品先物取引では、証拠金を担保にすることで商品ごとに決められた倍率までの金額を取引できます。
投資商品 | 証拠金 | レバレッジ |
---|---|---|
金(標準) | 108,000円 | 50倍 |
白金(標準) | 60,000円 | 25倍 |
原油 | 135,000円 | 15倍 |
ガソリン | 140,000円 | 20倍 |
大豆 | 80,000円 | 15倍 |
(2019/10/1の情報)
レバレッジ取引で借金を背負ってしまったらどうするべきか
ではレバレッジ取引によって借金を背負ってしまった場合、どのように対処すべきでしょうか。 取引内容によっては、自力での解決が不可能なくらい多額な借金になっている場合もあります。
別のレバレッジ取引で借金返済しようとしない
レバレッジ取引で借金してしまったとき、損失を取り返そうとして別の取引に手を出したくなるかもしれません。 しかし、この方法は絶対にやめましょう。 失敗すれば、ますます状況が悪くなるだけです。 借金をしてしまったら、まずは取引に失敗したことを認め、借金の返済に向き合いましょう。 そして、自力での返済が困難な場合は、債務整理を検討しましょう。
まずは債務整理を検討しよう
借金を自力で返済することが困難だと判断したら、まずは司法書士や弁護士へ債務整理の相談しましょう。 借金額によって任意整理か、個人再生か、自己破産か、取る手段は変わってきます。
とはいえ実際には、FXや不動産などの場合は額が大きすぎるため、自己破産してしまった方が楽なケースが多いです。 自己破産するかどうかは別ですが、自力での解決が不可能な場合はまず相談する事から始めましょう。
注意!FXや株では自己破産が出来ないことも
借金の額が大きすぎる場合は、自己破産をするという選択肢も入ってきます。
しかし自己破産が成立する条件には裁判所からの免責許可が下りる必要があります。
残念なことに、先述で紹介したレバレッジ取引が出来る4パターンの場合は“免責不許可事由”とされています。
そのため、基本的にこれらの理由による自己破産は認められていないのです。 とはいえ実際には、それ以外の事情が考慮されたことで裁判官の裁量により免責が許可されるケースもあります。
そのため、ダメ元でも自己破産が可能かどうか、手続きをしてみるといいでしょう。
自己破産が出来ない場合は、個人再生を利用しよう
自己破産が免責不許可により認められなかった場合は、個人再生の申請をしましょう。
個人再生であれば借金を背負った理由に関係なく、借金額を減額されます。 個人再生とは、減額された借金を3-5年の期間に分割で返済できると認められた人が利用できます。
そのため、安定した収入があれば利用することが出来るので、利用して借金を容易に返済しましょう。
【まとめ】レバレッジ取引で借金を背負うパターンと返済方法
レバレッジ取引における借金について、まとめていきます。
まずレバレッジ取引において借金を背負うパターンは4つあります。
- FX
- 不動産取引
- 株式信用取引
- 先物商品取引
そしてこれらの取引に失敗して借金を背負ってしまったとき、あなたがやるべきことは以下のことになります。
- まずは取引の失敗を認め、借金に向き合う
- 自力での返済が困難な時は、債務整理を活用する
- 司法書士、弁護士と相談をして任意整理、個人再生、自己破産を選択
しかしレバレッジ取引による借金を背負うパターン全てにおいて、自己破産の免責許可は原則として認められていません。
そのため、自己破産を選択するほど多額な借金を背負ってしまった人が取れる現実的な選択肢としては個人再生になります。 実際に個人再生をするかどうかは別として、借金の問題はあなた一人では解決するのが難しいです。
まずは司法書士・弁護士に適切な返済方法を相談してみませんか。