相続した借金は返済義務がある?3ヶ月以内の相続放棄の重要性

相続と言えば、お金や資産などの財産が引き継がれるプラスのイメージが強いようにも思えますが、相続されるものは必ずしも良いものとは限りません。
その一つとして挙げられるのが借金です。
このような相続の事を「負債相続」と言い、親に借金があるとは知らず、相続によって借金を受け継いでしまったというケースも実は少なくありません。
では、もし借金を相続してしまった場合、相続者は絶対に残された借金を返済していかなければならないのでしょうか。

今回は、この相続による借金の対処方法について解説しています。

借金の相続した相続者は返済の義務が発生する

財産を相続するにあたり、相続分の取り分は「法定相続分」と呼ばれる法律に定められた割合で分配されます。
例えば、親が100万円の借金を残して亡くなった場合、その負債相続は子供にそのまま相続され、もし孫がいた場合は、子に50万円、孫に50万円という形で配分されていきます。
要するに、親の借金が相続された事によって発生する返済義務は子だけではなく、その孫にまで相続されるという事になり、借入先である金融機関(債権者)は、その相続人全員に返済請求ができるようになるのです。

https://free-saimu.com/post-464/

借金の相続を対処するにはどうすれば良いか

申し立てをしないと単純承認されてしまう

相続者は借金が相続される事を知ってから3ヶ月以内に何かしらの申立てをしないと、その相続が承認されたとみなされます。
この承認の事を「単純承認」と言い、相続人には借金返済の義務が発生する事となります。
その為、借金の相続を対処する必要がある場合は、単純承認となる3ヶ月以内に以下の申請を裁判所で行わなければいけません。

限定承認(限定相続)の申請を行う

定承認とは、資産などのプラス財産と範囲内で借金などのマイナス財産も相続する事を承認する手続きです。
例えば、プラス財産が100万円、マイナス財産が500万円あった場合、この相続を限定承認した場合にはプラス財産100万円とマイナス財産100万円が相続される事になります。
マイナス財産を減らせるうえに、プラス財産が全て相続してもらえるメリットが特徴的な手続きです。

限定承認(限定相続)に伴うデメリット

まず、限定承認相続人全員が同意する必要があり、一人でも「借金は嫌だ」と同意しなければ、この手続きを成立させる事ができません。仮に承認が得られたとしても、家庭裁判所の手続きが非常に複雑であり、弁護士・司法書士に依頼しない限り、かなりの労力を費やす事となります。

また、限定承認で不動産など含み益(キャピタルゲイン)のある財産が相続された場合、被相続人から相続人に財産が時価で売却された扱いとみなされ、みなし譲渡所得税が発生します。なお譲渡所得税とは、不動産を売却したことによって生じる所得税を言います。
この税金は相続人ではなく、被相続人が払うべき税金ですので、この場合、準確定申告(被相続人に代わって相続人が行う確定申告)を行わなくてはいけません。
更に、納税義務は被相続人にありますが、被相続人が納税はできませんので、その義務は相続人が引き継ぐ形となり、ケースによってはマイナス財産が圧倒的に多くなってしまう可能性も考えられます。

このような手続きの複雑さや税金問題などが原因で、実は限定承認を行う相続人はそう多くはありません。

相続放棄の申請を行う

相続放棄とは、その名の通り相続を破棄する手続きです。
被相続人に莫大な借金があった場合も、その相続を破棄する事で相続人は一切の借金返済義務を負う必要はありません。
また、これと同時に相続に関わる権利も放棄されるため、相続に関する親族とのトラブルなどに巻き込まれる事もなくなります。

相続放棄に伴うデメリット

相続放棄全ての相続を破棄する手続きですので、プラス財産も全て破棄することとなります。
被相続人の財産である家に居住していた場合でも、その家は破棄となりますので退去が必要となります。

また、相続放棄一度手続きを済ませてしまうと、それを撤回する事はできません。

加えて、相続放棄をすると相続の権利も無くなりますので、その相続権利は次順位の相続人に渡ります。これが原因でトラブルが発生してしまうというケースも少なくはありません。
例えば、借金の相続権利が祖父母に移った場合、その事を知らずに単純承認してしまうと、借金返済の義務は祖父母に渡ります。
これは自分の子に相続権利が写った場合も同様です。
相続放棄は、一見自分自身の問題に思えますが、実は結構周りを巻き込んでしまう可能性がある手続きでもありますので、注意が必要です。

よく読まれている記事