2002年に行われた司法書士法の改正によって、法務省から認定を受けた「認定司法書士」は、登記や供託、過払い金の返還訴訟などといった様々な業務を請け負っています。
一般人の生活の中で様々な問題を解決に導く司法書士の業務内容について、「できること」と「できないこと」にはどのようなものがあるのでしょうか?
生活をしていく中でトラブルが起きた際に、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきか迷う方もいると思います。
そこで司法書士の主な4つの業務でもある、「少額訴訟債権執行の代理」、「外国人帰化申請手続き」、「供託手続き」、「筆界特定手続き」について紹介します。
司法書士の4つの業務
基本的な民事訴訟については、司法書士に頼むことで解決してもらえることが多くあります。
司法書士の主な業務は以下になります。
- 少額訴訟債権執行の代理
- 外国人帰化申請手続き
- 供託手続き
- 筆界特定手続き
少額訴訟債権執行の代理業務
まず一つ目の「少額訴訟債権執行の代理業務」について、できることとできないことを紹介します。
司法書士にできること
司法書士にできることとしては、請求訴訟額が140万円以下の民事事件が挙げられます。
その金額の範囲以内であれば、以下の業務を行うことができます。
- 債権執行事案に関する法律相談
- 裁判所に提出する書類の作成
- 債権者に対する催促停止の要求
- 過払い金の請求など
例えば過払い金に関しては、債権額が140万円以内であれば、「認定司法書士」による解決が可能になっています。
過払い金とは、過去にキャッシングやカードローンを利用して、多額の利息を求められた方が実際に払っていたケースが該当します。
既に返済が終わっている場合でも、過払い金の請求をするだけで、払い過ぎた利息を取り戻せることもあるのです。
まずは自分が過払い金請求の対象にあたっているのか、気になる時には司法書士に相談してみましょう。
相手を差し押さえなければならない強制執行手続きでも、裁判所に提出する書類の作成は司法書士が行うため、サポートをすることができます。
司法書士にできないこと
逆に、司法書士にできないことについては、140万円を超える規模の事案に関する相談や交渉、債権者との意見の相違があった場合などの交渉・代理・和解交渉などが挙げられます。
これらは弁護士の案件になりますので、司法書士では一切携わることはできません。
何より、司法書士が訴訟代理を行うことができる裁判所は、簡易裁判所のみに限られています。
そのためこれ以上の大きな問題があった場合に、司法書士では高等裁判所や地方裁判所への控訴審や、最高裁判所等への上告審などは行えないのです。
このようなケースに見舞われた時には、司法書士ではなく弁護士に頼みましょう。
基本的に規模の大きな問題を解決に導くのは、弁護士の仕事になるのです。
外国人帰化申請手続きについて
2つ目の「外国人帰化申請手続き」も、司法書士が扱う業務の一つになります。
外国人申請帰化手続きとは、日本で生活している外国人が、日本国民になるために必要な手続きのことを指しています。
結婚などが理由で、外国人が日本国民になるためには、法務大臣の許可を得なければなりません。
必要な書類を申請して法務局の審査に通らなければ、日本国民になることはできません。
無事に日本国民になるための手伝いをするのが、司法書士の大切な仕事の一つになります。
ただし司法書士にも、できることとできないことがあります。
司法書士にできること
外国人は、法律上の要件を満たすことができれば、日本国民になることができます。
そのため様々な事情の相談を受けることもあれば、法律の仕組みに関する説明を含む相談を受けることもあり、その点については司法書士が行うことができる業務になっています。
帰化するための書類作成も司法書士が行うため、帰化に関する相談やアドバイスができる司法書士にお願いすることが一番です。
この帰化に関する準備作業にはかなりの時間を必要としますので、専門家でなければ理解しにくい部分も多々あります。
法律に詳しい司法書士だからこそ、外国人の帰化のサポートが可能となるのです。
司法書士にできないこと
もちろん司法書士にも、できないことはあります。
例えば、帰化が認められなかった外国人に対して、不服を申し立てる場合には行政や裁判所に出向くということは、司法書士には領域外になります。
そのため帰化申請が通らなかった場合には、司法書士を通じてではなく、弁護士を通して不服の申し立てを行わなければなりません。
信頼のできる司法書士が見つかっても、この点については仕方ありませんので、その時には司法書士に弁護士の紹介をお願いしたり、相談をするといいでしょう。
供託手続きについて
供託手続きとは、財産を供託所に預けて提出や管理をさせた時に、ある人がそれを取得し、法律上の目的を達成したと見なすことで、法的トラブルを防止するための制度です。
分かりやすく例を挙げると、住人との間のトラブルで大家が家賃を受け取らなかったとします。
そうすると、住人は債務の履行ができなくなってしまいます。
そのような時に住人の法的立場を守るために、受取を拒否されてしまった家賃を供託所に一旦は預けます。
そうすることで弁済供託と見なされることになり、住人はきちんと家賃を払ったと証明されることになります。
このようなケースでは、司法書士が活躍します。
司法書士にできること
司法書士は「弁債供託」の他にも「保証供託」、「執行供託」などがありますが、これらの供託に関する手続きなどの業務を担うことになります。
供託手続きは、司法書士法で定められた独占業務なので、司法書士の資格を持った者しか関与することができない決まりになっています。
司法書士にできないこと
司法書士にできないことは、例で挙げた住人と大家との関係で見ると、家賃支払いなどのトラブルが起こった場合に間に入って解決するために仲介になることはできますが、トラブルが酷くなって裁判による紛争解決の場合は、弁護士の領域となることから、司法書士では対応できません。
この時にも、認定司法書士であれば訴訟額が140万円以下の場合に限り仲介することができますが、それ以上の金額になってしまうと、仲介することも関与することもできないのです。
筆界特定手続きについて
最後の「筆界特定手続き」についてですが、筆界とは簡単に言えば土地と土地の間の境界線のことを指しています。
筆界の由来は、土地の単位を「筆」という字で表すため、このような名称になったと言われています。
この筆界特定手続きには、二つの異なる土地の境界線を、はっきりと明確にさせるために行われます。
司法書士の役割としては、土地の所有者同士が筆界が原因となり争っている場合に、筆界特定制度を利用して和解させることです。
司法書士にできること
制度を用いた筆界特定は、法務局で行うように決められています。
問題となる土地を登記している人が土地を管轄する法務局に申請して、外部の専門家に依頼をして現地測量を実施します。
その結果を踏まえて、登記官が筆界を認定し筆界特定手続きを行う、という流れになっています。
司法書士ができることには、申請者の代理人として制度を進めていくことができます。
ただし、対象となる土地の評価額が5600万円以下のケースに限られるので注意が必要です。
司法書士にできないこと
司法書士にできないこととしては、土地の評価額が5600万円以上の場合が挙げられます。
そうなると司法書士の業務領域外となってしまうため、弁護士に相談を依頼する形になります。
裁判所に提起する筆界特定訴訟よりも、法務局で行う申請手続きの方が迅速に解決できることから、申請者の代わりとなれる司法書士の活躍機会は多いと言えるでしょう。
まずは土地の評価額がどれくらいになっているのか、心配な方は土地の値段を先に調べてもらい、司法書士に代理人として申請してもらうと良いかもしれません。
民間のトラブルはもとより様々な問題を解決することができる司法書士にも、「できること」と「できないこと」があります。
司法書士が対応できる土地の値段や訴訟額によっても、できることとできないことがはっきりと分かれています。
まずはトラブルが起こった時に、司法書士が対応できる問題なのか、そうでないのかを相談することから始めるといいでしょう。
司法書士が対応できない場合には、弁護士が対応することになります。
裁判所を通しての手続きとなるケースが多く時間もかかりますので、事前に確認しておくと安心です。
過払い金などの請求で今すぐ司法書士の助けが必要な方は、迷わず迅速に相談してみましょう。