自己破産は、債務整理の方法のひとつです。
裁判所に免責許可の申し立てを行い、裁判所を通じて支払い義務を免除してもらう手続きのことをいいます。
この債務整理の方法は、どうしても返済ができなくなった場合の最終手段です。
それは自己破産することによる影響が大きいからと言えます。
官報や裁判結果記録などに掲載されてしまうこと、99万円を超える現金と時価20万円以上の財産や不動産を失うこと、職業や資格取得の制限、ブラックリストと呼ばれる信用情報の事故情報として扱われるなど、自己破産後の生活に影響があるのです。そのため債務整理をする手段としては、最終的な選択となります。
今回は、自己破産した人とアパートなどの賃貸契約についてご紹介します。
自己破産によって住居がどうなるのか、また自己破産後に賃貸物件への引っ越しを考えている人にとって、賃貸契約に自己破産の影響がどのように及ぶのかは気になる部分です。
アパートなど賃貸物件住まいで自己破産した場合
まず自己破産の申し立てを裁判所にした人が、アパートなどの賃貸物件に住んでいる場合に、どのようなことが問題があるのかを見ていきます。
自己破産の影響とは
裁判所によって自己破産が認められる、すなわち免責許可の決定を受けるとそれまでの借金がゼロになります。借金がなくなれば、誰もがすっきりと再スタートできるはずです。
ただし借金がゼロになるという大きなメリットの裏には、当然デメリットもあります。
しかしそれらのデメリットを考慮しても、自己破産の申し立てを行い、免責許可の決定受け債務整理することの方にメリットがあるという人のための制度となっているのです。
具体的にはどのようなことがデメリットとしてあるのでしょうか。主なものをご紹介します。
官報に掲載される
国の機関紙である官報へ住所氏名が記載されてしまうので、自己破産したことが知られてしまうリスクがあります。
この官報の情報を見て、連絡をしてくる業者などもいます。
裁判結果記録に掲載されてしまう
インターネット上に裁判結果が掲載されるので、自己破産についての情報が知られてしまう可能性がある。ただ年間200万件近い自己破産関連の裁判記録があるので、意図をもって調べなければ見つけることは難しいです。
財産や不動産を失う
自己破産すると、財産は処分されてしまいます。しかし、生活を行っていく上での最低限の財産は必要ということで、衣食住に関連する財産は確保されることになります。ただ99万円を超える現金と時価20万円以上の財産や不動産に関しては対象となるので失うことになります。
職業や資格取得の制限
自己破産の手続きを行うと制限を受ける職業や資格があります。
弁護士や会計士、税理士や社会保険労務士など法律行為を補助するような立場の職業や資格に就くことが難しくなってしまいます。
ブラックリストに載る
これまでにも耳にしたことがある人もいるとは思いますが、信用情報の事故情報として扱われます。
自己破産を行うとこのようないくつかのデメリットとなる影響があります。自己破産後の、生活再建という部分で見ると、ブラックリストに載るということが一番影響します。
最低限の生活から再スタートを行う場合、資金というものが必要な場合、また周囲の人の自己破産を知られたくない場合もあります。そのような場合に、手持ちの現金が少ないことやクレジットを所持できないということが、スムーズな生活再建に影響を与えることも考えられます。
ブラックリストは5年から10年
ではクレジットカードや住宅ローンなどを利用することはできないのでしょうか。
このブラックリストと呼ばれる信用情報の事故情報は、金融機関などで共有されるので、新たにお金を借りることやクレジットカードを作ることは難しくなります。
ただ永遠に記載されるということではなく、10年程度で事故情報から削除されるといわれています。削除された後は、新たにお金を借りることもクレジットカードを作ることも可能になります。
アパートなど賃貸物件を退く必要があるのか
では自己破産を行った場合に行われる財産や不動産の処分によって、アパートなど賃貸物件に住んでいる人の賃貸契約に影響が出るのでしょうか。もし賃貸契約に影響が出るのであれば、生活の基盤である住居を失いかねず、大きな問題にもなってしまいます。
自己破産を理由には退去は言えない
結論は、「自己破産を理由には退去は言えない」です。
もし仮に不動産会社や大家さんが自己破産したことを知り、家賃の支払いに関して心配することがあるかもしれません。自己破産したことによってそれまでの信用度が悪化することも考えられます。ただ、自己破産したことが賃貸契約の解除やアパートなどの退去を主張してくる正当な理由とはなりません。
2004年6月に改正された民法で、自己破産が賃貸契約解除の根拠となるとされていた621条が削除されたからです。改正後の現行民法においては、賃貸契約の更新の拒否や解除を行うことが認められていません。
家賃滞納している
自己破産を行ったことだけで賃貸契約の解除は正当な理由になりません。
ただ家賃を滞納していると別の話となります。自己破産に関係なく、家賃を滞納するということは契約違反となり債務不履行となるからです。滞納が家賃の3か月分となった時に、催告なしに賃貸契約が解除できるとされています。あくまでこの3か月は目安ですが、退去を求められても仕方がないということです。
自己破産の手続き中に、返済などをすると偏頗行為とみなされることがあります。しかし家賃は生活をするうえで必要な出費と認められているので、家賃の支払いを行い、賃貸契約の解除や退去の理由を失くして、生活の基盤を確保しておくことをおすすめします。
自己破産後アパートなど借りることができるのか
自己破産をすると、クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンを組めなくなります。そのため賃貸契約もできなくなるのではと心配する人も多いはずです。
しかし、自己破産を行った人でも賃貸物件は借りることが可能です。法律上、自己破産した人が賃貸契約が行えないということはありません。
ただ賃貸の入居審査に落ちることは考えられます。すなわち、法律上賃貸契約に制限はないが、自己破産ということが審査に影響を与えるということはあります。
賃貸契約を行う前の審査としては、大家さんや不動産会社さんの審査、家賃保証会社による審査の2つです。
家主や不動産会社の審査
この審査は、家賃をきっちりと支払ってくれるかどうかということに対して行う審査なので、ある程度の収入が得られていればそんなに問題となる審査ではありません。そもそも自己破産をしたかどうかの情報は、ご自身が伝えない限り知るすべがありません。
信用情報機関に加盟している保証会社の審査
もう一つの審査である家賃保証会社による審査です。こちらの入居審査の場合は、借主が家賃を滞納した場合の肩代わりをする役目なので、支払いうことができるかどうかのチェックが厳しく行われます。
信用情報機関に加盟している保証会社の場合は、信用情報をチェックすることも審査のひとつの基準です。そのため信用情報に記載される自己破産の情報を確認することができます。そのため、家賃の支払い能力がないとみなされることで、ほとんどの場合が審査を通過することはないはずです。信販系の家賃保証会社は、加盟していることがほとんどであります。
信用情報機関に加盟していない保証会社の審査
ただ保証会社の中には、信用情報機関に加盟していない会社もあります。
その場合には、自己破産をしたという情報は伝わらないので、審査に通りやすい傾向があります。この場合に気を付けたいのが過去の家賃滞納記録です。信用情報機関に加盟していない保証会社も家賃滞納記録は共有しています。ですから家賃滞納したことがある人は注意が必要です。
まとめ
今回は、自己破産した人の賃貸契約についてご紹介しました。
自己破産をした場合、アパートなどの賃貸物件に影響があるのか、また家主や不動産会社から退去を求められるのか、新たに賃貸契約を結びアパートなどに住むことが可能かどうか、賃貸契約に関わる不安なことが多くあります。
すでに賃貸契約を結んでおれば、家賃の滞納がなければ退去は求められません。退去を求める正当な理由として自己破産がならないからです。
自宅を売却するなどして手放し、新たな賃貸契約を結びアパートなどの賃貸物件に住もうとする場合には、家賃保証会社の審査によって自己破産したことが影響する場合があります。そこで上手く賃貸物件を借りるために、不動産会社を味方にすることをおすすめします。
借りて欲しい不動産会社と借りたいあなたの利害関係は成立するはず、事情を伝えて信用情報機関に加盟していない家賃保証会社を利用できる物件を紹介してもらうことが、賃貸物件を借りることをスムーズにします。
自己破産を行ってもアパートからの退去は求められない、賃貸契約を結ぶ時には工夫して話を進めることができれば、アパートなどを借りられる道が開けるということです。