何気ない毎日の生活の中でも、突然の体調不良や事故など死へのリスクは誰にでもあります。
もし借金をしている人が死亡した場合、借金はどうなるのでしょうか。
今回は、カードローン借金の債務者が突然死亡するということが起こった場合に、債務者の周辺への影響や債権者がどのように行動をとるのかなどを見ていきます。
バタバタと慌ただしくさまざまなことが起こるタイミングでも、しっかりと行動できるように事前に知っておくと不安は軽減されるはずです。
借金した本人が死亡した場合
死亡というリスクは借金の有無に関係はありませんが、借金をすることは周囲へ影響を与えるリスクを増やすこととなってしまいます。ましてやその借金の存在を家族や周囲の人たちが知らなかった場合には、突然のことで大きく驚くことでしょう。
カードローンなどで借金した本人が死亡した場合にどのようなことが、遺族や周囲に起こるのか見ていきます。
遺族がすること・できること
借金は債務者本人が死亡した場合でも、返済の義務がなくなるわけではありません。基本的には、法定相続人である配偶者や子などの遺族が相続することになります。
相続には、プラスとなる財産だけでなく、マイナスとなる財産も含まれます。
亡くなった被相続人の財産を引き継ぐというのが相続ですが、土地やお金などの資産だけでなく、借金などの負の財産も相続の対象となります。このことは意外と知られていないことが多く、被相続人に借金がある場合には相続人が借金の返済をする必要性が発生してしまうことになるのです。借金があるということを知らされていない場合には、突然の借金という事実と負債を抱えることに驚かれることがあり得ます。
ではそのような場合に、遺族にはどのようなことができるのでしょうか。それは主に以下のようなことになります。
- 相続放棄
- 限定承認
詳しくはあとでも触れますが、このような手続きが必要となります。借金の返済が嫌だからと言って、何もしないである一定期間が経過すると「単純承認」という、相続を認めたということになってしまいます。
手続き等の方法や詳しいことなど、わからないことや知りたいことがあれば、このよう借金返済の専門家である司法書士に相談してみることが近道です。問題解決までサポートしてもらえます。
カードローンなどの会社(債権者)等がすること
債権者である金融機関などはどのようなことを行うのかです。
遺族が借金のことを知っている場合
債務者が死亡したことを連絡して、今後の対応や進め方を相談してみてください。バタバタとして忘れてしまいがちですが、返済が滞ったままの状態が続くと状況が複雑化してしまう可能性もあり、なるべく速やかに行うことをおすすめします。
遺族が借金のことを知らない場合
遺族が借金のことを知らなければ、債権者への連絡はできないので金融機関など債権者への返済が滞ってしまいます。
返済が滞ると金融機関は債務者に催促しますが、債務者は死亡しているので債権者に対して何もアクションができません。遺族と同居していない場合などは、遺族とも連絡が取れないこともあります。すると債権者は役所に住民票を請求します。ここで死亡の事実を把握、相続人に返済を促すために戸籍を取得し、債務相続の通知を出します。
この通知により遺族は借金の存在と負債の相続を知ることになります。
遺族は、借金があることを知っていれば債権者に連絡、知らない場合は債権者からの通知などに、適切な対応をしましょう。
相続放棄
先ほど触れた、遺族にできることのひとつとして相続放棄について見ていきます。相続に関する決まりは民法に定められており、相続人には以下の3つの選択肢が与えられています。
- 相続放棄
- 単純承認
- 限定承認
ここでは相続放棄やその注意点など、相続をする際に少しでも不安が軽減できれば幸いです。
相続放棄とは
相続放棄は、被相続人のプラスとなる財産もマイナスとなる財産もすべての財産を引き継がないという選択です。基本的に、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄をする方が賢明です。
しかし相続放棄は先ほども言いましたが、すべての財産を放棄しなければならないので、たとえ現時点で住んでいる自宅であっても相続できなくなります。このまま住み続けるために自宅を相続する場合は、マイナスの財産の返済をしなければならなくなります。
相続をどのようにするのか、トータルで検討することが必要です。
相続放棄の注意点
相続放棄を選択する場合は2つの注意点があります。
- 相続放棄には手続きが必要であること
- 一定期間内に手続きを行う必要があること
相続放棄には手続きが必要である
民法では、被相続人の最終住所地管轄の家庭裁判所へ書類の提出し受理されなければならないと規定されています。
一定期間内に手続きを行う必要がある
この手続きには期限があり、期限内に手続きがされないと相続を単純承認したことになってしまうのです。
その期限に関しても民法に規定があり、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければない」とされています。この知ったときというのは、被相続人が死亡したことを知ったときを意味しています。
すなわち、被相続人の死亡から3か月以内に、被相続人の最終住所地管轄の家庭裁判所に対して、必要書類を提出受理されることで、相続放棄が成立するのです。
ただ被相続人の財産をすべて把握していればそんなに難しくありませんが、まったくわからない場合もあり、それを3か月以内に調べて判断する必要があるのは、それなりの苦労があります。
3か月という期間ですべてを調べられない場合は、家庭裁判所に期間伸長の申し立てをすることが可能です。その場合は調査の結果を前提に、相続放棄・単純承認・限定承認を選択しておくことで期間の延長ができます。
身近な配偶者や子供が相続放棄した場合でも、他の親戚等に法定相続人としての相続権利が移行していくので、相続放棄したから終わりということではなく、親戚等に事前に伝えておくことをおすすめします。
単純承認
この方法は一番オーソドックスな相続の方法と言えます。それは割合で言っても負債を抱えている人よりもそうでない人の方が多く、特段の必要な対応もないことから結果的に単純承認されているということになっているようです。
単純承認とは
これは被相続人のプラスの財産・マイナスの財産すべてを相続することを意味しています。マイナスの財産よりもプラスの財産が大きい場合や先ほどのように住宅を相続したいために相続放棄できない場合などがこの選択となります。
単純承認には、手続きを行うことも期限内に何かしなければならないこともありません。
単純承認の注意点
この場合の注意点は、他の選択をしようと検討していたり、手続きを始めている場合に被相続人の財産を処分してしまったりすることで、単純承認とみなされてしまうことです。
有り得る事例としては、被相続人の預金を引き出して使用してしまうことや財産を売却してしまうことなどです。ただ、期限が到来した被相続人の債務の返済や経済的に価値の小さいものを形見分けするなどについては、他の選択を取ることが可能である場合が多いとされています。
預金口座からお金を引き出た後にマイナス財産の存在が判明し、相続放棄ができなくなることもあるので、注意が必要です。
限定承認
この方法は、残したい財産がある場合に有効な方法となっています。
自宅などの不動産などを残しておきたい場合には、相続放棄や単純承認などよりメリットがある方法ですが、デメリットともなるような条件もあります。そのために、相続放棄や単純承認よりも選択されることは少なく、特別な事情があるときなどの選択方法とも言えます。
限定承認とは
プラスとなる財産の範囲内で、マイナスの遺産も相続する方法です。
例えば、プラスの財産が500万円あり、マイナスの財産が1000万円ある場合に限定承認を選択すると、プラスの財産500万円を相続できるかわりに、マイナスの財産を500万円相続する必要があります。
この方法は、1000万円のマイナスの財産があっても、500万円のプラスの財産と同額だけを相続することで、残しておきたい財産を相続することができます。自宅やどうしても残したい形見などを相続することが可能になる方法です。
また単純承認することは難しい状況であっても、相続放棄を選択するよりも債権者のために、少しでも多くの返済が可能となる方法でもあるので、債権者の中に親族や親しい人がいる場合には有効な選択となります。
限定承認の注意点
限定承認には以下のようなデメリットもあることに注意が必要です。
- 相続放棄と同様で手続きと3か月という期限がある
- 相続放棄よりも手続きが、複雑かつ煩雑であること
- 共同相続人全員での手続きが必要
- 共同相続人全員の同意がなければ、限定承認は選択できない
3か月以内で家庭裁判所へ手続きが必要で手続きが複雑である。
これによって実際は、あまり選択されないのが限定承認です。しかしマイナスの財産のことを全く気にする必要がないほど資金があれば単純承認を選択すればいいのですが、どうしても残したい財産があり資金に余裕が少ない場合は、選択する他ありません。
共同相続人全員参加かつ同意のうえの手続きが必要
全員が好意的で前向きであればいいのですが、非協力的な場合や説得する必要がある場合などは苦労する覚悟が必要です。3か月という期限内にプラスの財産とマイナスの財産の調査し結果を提示して、同意をしてもらうという労力と努力が不可欠となります。
このようなハードルを越えることが求められる限定承認はメリットがありますが、なかなか選択されない方法であるとも言えます。
限定承認を利用する場合には、司法書士などの専門家に相談し、サポートを受けることが問題解決には必要な手段です。
保証人や連帯保証人になっている人は?
ここまでは財産を相続する人にカードローンなどの借金返済の義務が生じる場合を見てきましたが、ここからは保証人や連帯保証人に返済義務がある場合はどのようになるのか見ていきます。
保証人・連帯保証人とは
保証人・連帯保証人とはカードローンなど借金の契約通りに返済することができなくなった場合に備えて、債務者の代わりに返済する義務を負うための人のことをいいます。債権者に対して主債務者が返済できない場合、返済する義務が発生します
ただ保証人と連帯保証人では、主債務者などへ主張できる権利に差があり、以下のことは保証人にはあるが連帯保証人にはない権利となっています。
催告の抗弁権
主債務者に先に請求するよう主張できる権利
検索の抗弁権
主債務者の資産に対する強制執行を主張できる権利
分別の利益
保証人が複数いる場合は人数で割った金額のみの返済義務ですが、連帯保証人は複数いても全額返済義務があります。
保証人・連帯保証人の場合
債務者が死亡した場合、借金はなくならないということは説明してきた通りで、保証人や連帯保証人に対しての返済義務も残ります。
しかしまずは保証人や連帯保証人ではなく、法廷相続人に返済義務が発生します。ただし法定相続人が、相続放棄をした場合などには保証人や連帯保証人に返済義務があることになります。しかも保証人や連帯保証人は、相続放棄などができないために全額が返済義務対象です。
親族が債務者の場合
親族が債務者の場合は、法定相続人であり連帯保証人となる可能性もあります。法定相続人の部分の債務には相続放棄・単純承認・限定承認の選択をすることが可能です。しかし、連帯保証人の部分の債務は全額返済する義務があります。ただ保証人には、上記で示したような主張をすることも可能となっています。
このように連帯保証人は、債務者が返済できない場合に、自分の債務として返済の義務が生まれます。
もしもに備えてしておくこと
相続人などがスムーズに解決できるように借金などの負債はできる限り知らせておくことが望ましいです。相続放棄・単純承認・限定承認、これらのどれを選択するにしてもマイナスの財産の有無がポイントとなります。さらに言えば、そのマイナス財産の金額がわかれば相続の方法を選びやすくスムーズです。
兄弟や子供などの法定相続人が多く、プラスの財産もマイナスの財産も多くある場合は、残してもらわないと困る財産も含まれることとなりやすく、限定承認を選択する可能性があります。しかしこのように共同相続人が多くいる場合の意思統一は難しい場合が多く、また全員での手続きが高いハ-ドルとなりかねません。単純承認できない可能性があるのであれば、もしもに備えた準備をしておくことが賢明な方法といえます。
まとめ
今回は、カードローンなどの借金の完済前に亡くなってしまった場合はどうなるのかということを説明してきました。まず前提として、借金したお金はどのようなことがあっても返済しなくてはいけないのは、債務者の当然の義務です。
債務者本人が死亡したことによって借金は、マイナスの財産となって法定相続人に相続されます。ただ法定相続人には、民法によって相続放棄・単純承認・限定承認のいずれかを選択できるように定められています。しかし、保証人や連帯保証人にはそのような選択はできず返済の義務が存在します。
すなわち、債務者が返済できなくなった場合、その理由には関係なく保証人が債権者に対して返済する義務は継続されるということです。