芸能人や著名人が逮捕されたときには保釈金が話題になります。最近の例でいえば、保釈中にレバノンへ国外逃亡したことで15億円という高額な保釈金を全額没収された、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が挙げられます。
保釈金については、かなりの額のお金が納付されたという報道を目にした方も多いでしょう。一般人でも、逮捕されれば支払う機会はあるため、自分に無関係の問題と考えるべきでないです。そこで、保釈金とは一体何なのか、果たしてお金が戻ってくるのか、相場はどのくらいなのかなどを解説しましょう。
保釈とは何か
そもそも保釈金を支払う保釈とは、いったい何なのでしょうか?
保釈とは、勾留されている被告人を住居などに制限を設けたり、保釈金を納付することなどを条件づけたりすることで、身柄の拘束を一時的に解く事を言います。
保釈金とは?
保釈金とは、被告人が釈放されるために裁判所に預ける保証金です。起訴後は保釈の請求をし、保釈金の納付をすることで自宅に帰ることもできるようになります。
保釈されるために支払うお金
保釈を希望する場合、裁判所に申請をします。そこで裁判官が資料を審査して、認めるかどうか決めます。
ただし許可されたからといって、すぐに自由になるわけではありません。勾留が解かれるためにはさまざまな条件を守る必要があります。たとえば、下記のような条件が添えられるのが普通です。
- 公判に必ず出廷する
- 住所変更や長期の旅行などを無断で行わない
- 事件の関係者と接触しない
- 保釈金を支払う
このような条件の1つとして指定されるものが保釈金です。所定の金額を支払うことで、勾留が解かれて、判決の日まで一定の制限はありますが普段の生活に戻ることができます。
保釈金を払えば罪が軽くなるわけではない
先程も述べましたが、保釈金というのは被告人が一時的に身柄の拘束を解かれるための保証金です。
簡単に言えば、お金を人質にして、制限はあるものの一時的に自由になることができるというものです。起訴されたあとに罪が確定されるまでの間、勾留が解かれます。ただし、所定の条件に違反してしまえば再び勾留されることがあります。
勾留は、捜査の間に証拠隠滅や逃亡されるのを防ぐために行います。保釈が認められるということは、捜査の妨害をしないと判断されたといえるのです。ただし、万が一のことを考え、保釈金を納付させることで条件を守らせます。
裁判が行われることになれば、被告人が出席して、そこで罪が確定します。したがって、保釈される段階ではまだ罪が確定していません。芸能人が保釈金を支払って勾留が解かれたからといって、それはずるいというわけではありません。後日、判決が出て有罪となれば、刑務所に入る可能性もあります。
保釈金の金額とは?
芸能人のニュースを見ていると、裁判所にかなり高額な金額の保釈金を納付していると報じられています。
これは収入が非常に高い場合には、保釈金が高額に設定されやすいからです。保釈金は人質のような役割を果たします。そのため、収入が1億を超えるような人に対して100万円程度の金額を設定したとしても、あまり意味がありません。そのため、被告人の経済力が基準とされます。
また、その事件の重大性や予想される罪の重さ、前科の有無といったことも判断材料となります。重大な事件ではかなり高額に設定されることが多いのです。反対に執行猶予されることが確実な事件では、低く設定されます。
したがって、実際に支払われる金額はケースバイケースで大きく異なるものといえます。
準抗告とは?
お金を支払ったとしても、スムーズに拘置所や留置所を出られるとは限りません。
準抗告されるケースがあるからです。準抗告とは裁判に不服があるときに不服申立ができる制度のことです。たとえば、保釈の決定について検察官が不服申立てをすることがあります。ここで、裁判官が申立について正当な理由があるかどうかチェック、理由がないと判断されれば棄却します。
芸能人・著名人の保釈金の例
これまで多くの芸能人・著名人が逮捕されてきました。そのなかには、保釈金を支払った人もいます。
そこで、これまでに芸能人が保釈金を支払ったケースについて、いくつか紹介しましょう。
カルロス・ゴーン
先日保釈中であるにも関わらず、秘密裏にレバノンに国外逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告。
有価証券報告書の虚偽記載、金融商品取引法違反容疑、会社法違反・特別背任容疑などと何度も逮捕されましたが、保釈金を払って留置所を出ました。しかしその保釈中に、プライベートジェット機によってレバノンへ国外逃亡したことで話題になりました。この逃亡劇にはプロを雇い、レバノン政府も一枚かんでいるのではないかと噂されています。
そんなカルロス・ゴーン被告の保釈金の額は、なんと日本の保釈金額歴代2位の15億円と言われています。
保釈中に逃亡したことで、保釈金は全額没収となりました。しかしカルロス・ゴーン被告にとっては自由と天秤にかけた場合に、さほど高額ではなかったという事かもしれません。
沢尻エリカ
最近、保釈金を支払った芸能人としてまず思い浮かぶのは沢尻エリカさんでしょう。2019年の11月16日に逮捕されました。MDMAを所持していた疑いが持たれています。MDMAとは合成麻薬のことであり、日本では所持しているだけでも違法なもの。なんと沢尻エリカさんは合成麻薬を10年以上も前から利用していたことが明らかとなっています。行きつけのクラブでとてもハイテンションになっている沢尻エリカさんの様子は何度も目撃されていたそうです。捜査員はずっと目をつけていて、クラブへ行った帰りの11月16日の朝に沢尻エリカさんの自宅を訪れて家宅捜索しました。そのときに自らMDMAの場所を伝えたそうです。
そんな沢尻エリカさんの保釈金は500万円でした。しっかりと500万円を納付したため、沢尻エリカさんは留置所を出て、現在は裁判を待っている状況です。500万円というのは、一般人と比較すると高い金額といえるでしょう。さすがに売れっ子の芸能人だったため、高めに設定されているのです。
ピエール瀧
ピエール瀧さんは2019年の3月12日に麻薬取締法違反の容疑で逮捕されました。コカインを若干量使用していたことが発覚していて、陽性反応が出ています。ピエール瀧さんといえば電気グルーブのメンバーとして有名であり、近年は俳優としても活躍していました。NHKの大河ドラマにも出演していたため、急遽、代役を立てることになったことで話題になりました。
そんなピエール瀧さんの保釈金は400万円でした。ピエール瀧さんはすぐに納付したため、留置場から出ました。
ホリエモン
ライブドアの社長をしていて芸能人としても今では活躍しているホリエモンはかつて逮捕されたことがあります。ライブドア事件といわれているものであり、2006年の1月23日に逮捕されました。その後、ホリエモンは保釈請求をしたのですが、最初は通りませんでした。最終的に3回目にやっと認められたのです。そのときの金額は3億円でした。これをホリエモンは小切手ですぐに支払いました。最終的には実刑を受けることになり、長野刑務所に収監されました。
ホリエモンのケースは高額な部類といえます。被告の経済力や罪の重さによって保釈金が決められるため、ホリエモンの事件はかなり重い罪であり、しかも本人の経済力がかなりあったことがわかります。当時はライブドアの代表取締役社長をしていたため、かなりの資産を有していたことが予想されます。
ASKA
CHAGE and ASKAのメンバーであるASKAは2014年の5月17日に覚せい剤取締法違反で逮捕されました。少量の覚醒剤を所持していた疑いが持たれています。当初は容疑を否認していたのですが、尿検査によって陽性反応が出て、さらに自宅から覚醒剤や合成麻薬が発見されました。最終的には容疑を認めて起訴されました。保釈金は700万円を納付しました。これはかなり高額なケースであり、過去の印税などで資産をかなり有していたせいでしょう。
裁判では懲役3年執行猶予4年を求刑されました。
新井浩文
俳優の新井浩文は2019年の2月1日に強制性交の疑いによって逮捕されました。これは2018年の7月1日にオイルマッサージを受けていたときに女性従業員に対して暴行を働いた容疑です。逮捕されるまでに100本を超える作品に出演していたため、多方面に影響が出てしまいました。2月25日に保釈金500万円を納付しました。
野村沙知代
プロ野球選手や監督として有名な野村克也さんの奥さんである野村沙知代さんはかつて逮捕されたことがあります。2001年に脱税によって捕まってしまい、そのときの保釈金は5,000万円とかなり高額です。これは純粋な芸能人としてはおそらく最高額といえるのではないでしょうか。かなりの資産を持っていたことが予想されます。また、脱税という犯罪の悪質さも考慮されたのでしょう。傾向として経済犯の場合は金額が高くなるようです。
押尾学
押尾学は2009年の8月2日に麻薬取締法違反によって逮捕されました。この事件はマンション内でホステスと一緒にMDMAを使用していて、相手の女性は全裸で死亡していたという非常にショッキングな内容でした。このときの保釈金は1000万円でした。かなり高額であり、これは事件の性質がとても悪いことが考慮されたようです。押尾学は自分の罪をマネージャーになすりつけようとしていたことも発覚しており、非常に悪質な犯罪として批判されました。薬物だけではなく、女性を死なせたことで保護責任者遺棄致死の罪も問われたのです。
一般人の保釈金の相場とは?
芸能人だけではなく、もちろん一般人でも逮捕されれば保釈金を支払う場面が出てきます。それでは、普通の人はどのくらいの保釈金を支払うことになるのか、具体例を紹介しましょう。
一般的な相場とは?
保釈金は一般的には150万円から300万円程度が相場とされています。ただし、これまでに説明した通り、実際の金額は被告人の経済力や犯罪の性質などによって変わってくるものです。そのため、一般人であっても、高額になるケースも十分考えられるでしょう。
保釈金の具体例
たとえば、書店で漫画を数冊万引したようなケースでも、保釈金として100万円が設定されることがあります。あまり低い金額を設定すると効果が薄いからです。そのため、たとえ一般人であまり年収が高くなかったとしても、100万円を下回るようなケースはほとんどないといえます。軽微な犯罪だったとしても、最低100万円以上が要求されると思ってください。
大麻の所持によって一般人が捕まった場合は、150万円程度です。ただし、無職でほとんどお金を持っていないようなケースだと100万円になることもあります。
女性の自宅に侵入して下着などを数点窃盗したというケースでは、150万円程度になるでしょう。これがネックレスなど高価な貴金属を盗んだ場合には、200万円程度となります。
路上で原付きに乗りながら女性の鞄をひったくりしたといったケースでは300万円以上になることがあります。たとえば、ひったくりをして女性に怪我をさせたといったケースです。犯行が悪質であると判断されると金額が高くなりやすいです。
保釈金の分割払いはできるの?
お金を用意できないときは、証券や株などで代用することができます。あるいは、借金をして用意するケースもあります。
ただし分割納付は認められていません。すべて一括で支払わなければいけません。
このような状況で困っている人のために、立替制度があります。
代わりにお金を用意してくれる団体が存在するのです。審査はゆるく、高額でもすぐに用意してくれるのがメリットです。ただし、手数料がかかってしまうため注意しましょう。
また、事前に裁判官と金額について交渉することも可能です。提示されたお金が明らかに納付することが無理な金額ならば、相談してみるとよいでしょう。いくらまでならば、問題なく支払えるのか説明するのです。その金額が相場に近いものであり、裁判官を納得させられる説明ができれば、柔軟に対応してくれます。
保釈金は戻ってくるのか?
保釈金を支払ったら戻ってこないと考えている人がよくいます。実際に、保釈金は支払った後戻ってくるのでしょうか?
保釈金は戻ってくる
結論から言うと、保釈金は戻ってきます。
保釈金は没収されるようなことがなければ、裁判で有罪の判決が下りたとしても全額返還されます。
ただし、逃亡するなどルールを破ることをすれば、没収されます。
問題のある行動に出ないように行動を抑制する役目を果たしています。したがって、判決を受ける段階になればしっかりと返還されます。保証金のようなものであると考えましょう。
保釈金はいつどのように返還されるのか?
先程も述べたとおり、保釈金は裁判で判決がでれば有罪でも無罪でも返還されます。
有罪だからといって、没収されるということはありません。ただし、本人に対して直接手渡しで返還されるわけではありません。事前に届け出をしていた口座に返金されるようになっています。口座は本人のものでなくてもいいため、たとえば弁護人の口座を指定するケースもあります。この場合は、後で弁護人からお金を受け取ればよいのです。
弁護士を利用している場合は、返還されるときに、そこから弁護士費用が差し引かれるのが普通です。弁護人に手続きを頼んでいたならば、その報酬を弁護士が差し引いた上でお金が戻ってきます。
実際に戻ってくるまでにかかる期間は数日から1週間程度と考えましょう。
没収されるケース
保釈金は絶対に返還されるものではなく、没収されることがあります。決められた条件を破ってしまうとルール違反となり、納付したお金の一部、あるいは全部が没収されるのです。
たとえば、正当な理由がないのに裁判に出廷しない、逃亡しようとするといった場合です。もし出張や旅行という名目で遠方まで出かけたいならば、裁判所に許可を得る必要があります。証拠隠滅しようとしたり、共犯者と連絡を取ろうとしたりすることも禁止されています。
裁判の日までは、不利な行動を取らないようにして、ルールの範囲内で普通の生活を続けることが大切です。
まとめ
気になる保釈金について知っておきたい点をまとめました。芸能人や著名人の場合は高い金額を要求されることが多いです。判決が出るまで問題を起こさなければ、お金は戻ってきます。留置場を出るために預けておくお金だと理解しましょう。