滞納整理の督促状とは何?滞納処分の執行停止や差押さえについて解説

私たちは、生きて存在し、呼吸をしているだけでもお金がかかる生き物です。
例えば日本に住んでいる人は日本という国から税が課されます。
税金には様々な種類がありますが、基本的には国民に平等に課せられるものです。人によってその金額は違いますが、一度は支払う対象となるのです。
そしてその収めるべき税金を納めず、滞納してしまった場合に起こることが「滞納整理」です。

今回は滞納整理や滞納処分、そして滞納処分の執行停止について説明していきます。

滞納整理とは

納付期限までに納税者が税金などを納付しなかった場合、督促状や催告書などで納税の告知をします。その後差押えや交付要求などの滞納処分の手続きを行い、徴収を進めることになります。
便宜上このような手続きの流れを滞納整理と呼びます。

滞納処分とは

差押・換価・配当(狭義の滞納処分) 租税や公課の徴収権者が自ら滞納者の財産の差押を行って強制的に徴収すること
交付要求・参加差押 狭義の滞納処分とは異なり、自ら強制換価手続きを行うものではなく、他の執行機関が行う強制換価手続きに参加してその換価代金から配当を受けるための手続

滞納整理が起こるのはどんな時か

国や地方の税金を支払うことが1日でも遅れると、「税金滞納」となってしまいます。
一般的には滞納をすれば遅延金を追加で支払わなければなりませんので、多くの人は必死で納税しにいきます。

しかし中には、消費者金融や銀行のカードローンはしっかりと期限内に支払っていても、地方税や国税は多少無視しても大丈夫だろうと考える人がいるのですね。
その考えは間違いで、納税義務を甘くみるとかなり厳しい結末が待っています。
支払わなければ最終的には財産差し押さえがやってきますし、例え自己破産した場合でも納税義務は残るのです。

支払うべき税金を支払わずに滞納状態となり、通告や督促を無視してしまえば、やがてやってくるのは「滞納整理」です。

滞納整理の対象となる人はどんな人か

税金を期日までに支払わないと滞納者となりますが、滞納整理をされる対象となる人は「督促や催告をしても無視する人」「常習的な滞納者」「収入に応じた納税をせずに分納を繰り返してする人」、そして「給与の天引きをした市府民税を滞納する会社」などです。

滞納処分の流れとは

滞納して50日以内に「督促状」が届く

まず、滞納して50日以内に督促状が自宅へ届きます。
督促状はハガキや封書の形で届きますので、必ず中を確認してください。
督促状であれば、中に納付書が同封されているため、再納付期限までに支払いましょう。

ちなみにこの時の金額には延滞金(遅延金)は含められていませんいつ支払うかが確定していないため、納付後に滞納して1日目からの分を計算された上で、あとから延滞金(遅延分)として請求されます。

督促状を無視すると1・2か月後に「催告書」が届く

督促状を無視したり納付しなかったりした場合、更に1・2か月後には、催告書が届きます。
その内容は督促状とほとんど変わらないのですが、文言が1文追加されており、それが非常に重要となります。
文言は「期限までに納付できなければ、強制執行の手続きに入る」という内容です。

最終的には財産の「差し押さえ」

これを無視すると、結果として動産(不動産以外のすべての財産。現金・商品など)や不動産などの財産を差し押さえられて換金され、税金の納付にあてられるのです。

催告書が来ても何も行動を起こさなければ、滞納して半年くらいまでには差押えの予告書が届きます。
この予告書が届くということは、この時点で何を差押えするかの査定は終わっていると考えられます。財産は既に役所によって調べられた後ですので、言い逃れは出来ません。
調査となれば全てが徹底的に調べられます。
それは自分、そして家族だけでなく、会社にも来ることがありますので周囲の人に知られるリスクも増えます。

では、「納税できる収入があるにも関わらず納付していない人」ではなく、「支払いたくても支払うことが出来ない、生活がギリギリである人」の場合はどうすればいいのでしょうか。
何もないのに差押えされてしまうのでしょうか。
実は、滞納処分には「滞納処分の執行停止」という制度があります。

滞納処分する財産がないときなど「執行停止」される場合がある

滞納整理が行われる時、財産調査をされます。つまり生活状況を把握した上での実施ですので、滞納処分が出来ない人であると判断されると執行停止となります。
滞納処分の執行停止は、国税徴収法第153条、そして地方税法第15条の7に明記されており、以下の様な場合には執行停止ができるとなっています。

  • 滞納処分をする財産がない時
  • 処分をすることによって生活が酷く窮迫してしまう恐れがある時
  • 処分出来る財産が不明で同時に滞納者がどこにいるかが分からないような時

財産がない状態とは

  • 「銀行の預金」・「解約返戻金がある生命保険契約」・「給料」・「抵当権のない不動産」・「換金できそうな動産」がない、と判断された状態

ちなみにこの滞納処分の執行停止は申請制度ではありません。
税務署長もしくは地方団体の長などが職権で停止します。

執行停止となれば、その旨を滞納者に通告しなければなりません。ですから時々、ある日突然市役所などから手紙が届き、「滞納処分の執行停止をしました」と書いてあったけれどどうすればいいか、と悩む人が出てくるのです。
手紙に書いてあることは要するに、あなたは税金をこれだけ滞納していたけれど、もうチャラにするね、というお知らせになります。

もしも税金を滞納していて差押え状態になりそうだけれど、自分には本当に財産などない、という場合には自らそれを示すことで滞納処分の執行停止の判断が早く下せることになります。

申請制度ではありませんが、取られるものがないし払えるあてもない、という場合にはすすんでその状況を示してみるのも良いのではないでしょうか。
ちなみに、その時は財産もなく「執行停止」となっていても、後に就業したりして収入が出来ると「執行停止の解除」になり、その通告が来ます。

滞納処分を避けるためにはどうするべきか

ここまで読んで、滞納整理の状態になれば面倒臭い上に財産などの個人情報がくまなく行政に知られる、ということがお判りいただけたかと思います。
しかも悪質だと判断されて差押えとなった場合、悪徳金融の取り立てよりも厳しく怖い目にあった、という話なども出ています。

では、そんな状態になることを避ける為に出来ることはなんでしょうか。

1、とにかく申告だけでも期限内にしておく

税金には申告期限もあります。
このため、これを守ること、とにかくお金が厳しい状態であっても申告はしておくということが大切です。
どうせ払えないならそんな面倒なこと、とあなどってはいけません。申告すらしていないと、「無申告課税」というペナルティまでおまけでついてくることになります。

税金を払うことも厳しいのに、余計なものまで払うはめになるのは避けましょう。

2、税務署に即急に相談しておく

資金繰りが厳しく、このままでは納税はままならないという状態であるなら、早めに税務署へ相談にいきましょう。
悪質と認められる人には容赦しないのが税務署ですが、払う意思があるのに難しい、という方にはちゃんと相談にのり、アドバイスもくれます。
相談に行くときには家計簿や収支表などお金の状況や流れが分かるものを持参し、税金の納付が月にこれだけになる、という根拠を示すと更に良いでしょう。

3、とにかく何でも無視をしない

督促状や催告などよくわからないからと無視をしていると、後で非常に困ることになります。来た手紙は全て確認し、早めに手を打つ習慣をつけましょう。真摯な態度で臨むことで、道は開かれます。

4、払えるだけでいいので支払う

ないものはないと全く支払わないのではなく、これだけなら何とか、と少額でも良いので支払いましょう。開き直ったり悪態をついたりすれば、相手は悪意があると取ります。調査の結果財産が見つかってしまえば、開き直って払うことを拒否する姿は最悪の結末を招くことになります。

5、資金確保はしておく

税金は、どんな種類のものでも原則的に免除がありません(控除や延滞になるものはあります)。ですから税金で納める金額についてはあらかじめ準備しておく必要があります。所得税は前年の所得に対するものですので難しいところもありますが、ある程度の資金はみつくろっておくことが大切です。

延滞金(遅延金)はどのくらいになるか

1日でも納付が遅れると税金滞納者となるのは先に述べました。そして、遅れれば遅れるほど延滞金(遅延金)が課されることになります。
その金額は、本来の期限より遅れること1か月以内で年2.8%(特別基準割合+1%)です。それ以上となると、年9.1%(特別基準割合+7.3%)に増え、1000円未満で端数がある場合には切り捨てになります。
更に、税額が2000円未満であれば延滞金はかからないことになっています。

滞納整理には時効があるのか

原則的には、時効は5年とされています。
しかし、2016年から導入されたマイナンバー制度によって、滞納者の検索が簡単になり、照会も管理もされやすくなっています。
そのため、時効を迎える前に速やかに滞納処分へと手続きが進むと考えられます。

マイナンバー制度の導入によって、無視していたらいずれ時効がやってくる、とのんびり待つことは出来なくなっています。厳しい滞納整理に手続きが移行してしまう前にしっかりと納税、もしくはしかるべき場所で分割払いの相談などをしてください。

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