【実録】弟が病気で多重債務となり老舗川魚料理店を廃業するまで

【自己破産当事者プロフィール】

  • 性別: 男性
  • 職業: 元川魚料理店店主、現在無職で介護施設入院中
  • 年齢: 60代
  • 居住地:静岡県
  • 借金: 375万円
  • 対応方法:自己破産

【記述者プロフィール】

  • 性別: 男性
  • 関係: 兄
  • 年齢: 70代

今回話す自己破産の体験談は、私ではなく私の弟の話です。
自己破産当事者である私の弟が、現在要介護度4の認定を受け、ほぼ寝たきりの状態であり、発病後の介護や債務処理についてすべて私(兄)が代理したため、私が記述しています。

弟が債務超過に至る経緯

まずは弟がなぜ自己破産するに至ったのか、その経緯をお話します。

実家の店を引き継いで2,000万円借り入れ

弟は18歳の高校卒業時から、祖父が90年以上前に創業した川魚料理店を営んでおり、その専従従業員として働くこととなりました。
25歳のころから、店は母(婿養子の父とは離婚)が引き継ぎ、従業員として働いていました。
32歳の時、市の道路拡張事業により店舗を新築し、それに合わせ母が引退したため、弟が店主として後を引き継ぎました。
その際、店舗新築費用の不足分として2,000万円を地元信用金庫から借り入れています。

順調だった経営も傾きつつあった

店を引き継いだ時、弟より少し年上の女性パート従業員10名ほどもそのまま勤め続け、年商4,500万円前後で発病するまでほぼ平穏に経営しておりました。
ただ平成20年ころ、川魚の仕入れ価格が高騰した際、資金がショートしそうになった時があり、私が弟に200万円貸し付けたのですが、発病するまで返済はなされておりません。
それと、母から引き継いだ従業員も、ほぼそのまま勤めていたため、本人を含め
高齢化が進み、効率の悪化は否めなかったと思われます。

発病して廃業するまで

2019年5月ゴールデンウィークは休日にしたのですが、休日明けに急に腰痛におそわれ、ほとんど歩けなくなってしまいました。
その後6月末に休業するまでの介護は、店舗兼自宅の自宅で従業員にしてもらっていました。
6月上旬からは私(兄)も、週2回ほど介護に行っていました。
7月には従業員も退職したので、ほぼ私が介護を担当するようになり、市の福祉課から介護度2の認定をいただき、近隣市の医療介護施設に入院しました。
その際、昔勤めていて、独立した従業員の息子さんが、店を居抜きで借りようかという話が出ていたので、事業用の債務はすべて支払ったのですが、結局まとまらず、7月末に完全廃業しました。

債務超過の理由

弟が債務超過になった理由は、二つありました。

ひとつは、4月までは日銭が入ったので、アマチヤ無線やオーディオ・ビデオ等の趣味の用品を、見境なく買ったりしていたことです。そのため、6月に私が自宅に行った際にはそれらの用品があふれかえっている状態でした。

もう一つは、弟の店は、7~8月の時期が書入れ時で、1年の三分の一程度の売り上げがあったのですが、廃業したためその余剰資金がなくなったことでした。

弟の債務処理の経緯

弟は病を発病して働くことはおろか、日常生活にも支障をきたすようになって返済のめどもたたないため、専門家に相談することにしました。
しかし弁護士に相談する費用も捻出できない状態であったため、法テラスを頼ることにしました。

法テラスの相談から、自己破産を決断するまで

8月に法テラスに債務処理方法の相談に赴き、10月までの間にそこで紹介された先生と10月までの間に3回相談させていただいたところ、自己破産申請やむなしの決断をしました。

自己破産で困ったこと

弟の店は、近くの地主から土地を借りて、店舗は自分の所有でした。
店舗を処分して更地にして土地を返還しなければ、破産管財人を立てる必要があり、それには数百万円が必要になる場合があるとのことでした。それを避けるためには家を解体して財産を処分する必要があり、解体費300万円余を負担しなければなりません。
私も悩んだのですが、何とか家族間で話がまとまり、私が貸し付けて年内に更地にして、紹介された先生に破産開始の手続きを依頼しました。

自己破産手続き開始から免責の決定まで

2020年2月に破産手続開始の認定をいただき、裁判所から破産管財人の先生を立てていただきました。
それ以降は破産管財人さんとの書類等のやり取りを進めました。

ただ、弟の入院中の介護医療院が、コロナの影響で面会ができなくなり、破産管財人さんもやむを得ず、弟との電話での意思確認等で処理を進めていただきました。
その結果今年の6月に無事免責の決定をいただきました。

弟の現状

今年7月に胆のう炎を発症し、近くの総合病院で手術を受けました。
8月に退院し元の介護医療院に戻ったのですが、体力を消耗したためか、手足の動きが悪くなり、市の福祉機関で要介護度の再調査をお願いし、現在は要介護度4の状態になっています。

弟の自己破産について思うこと

弟の認識、フローとストック

弟は国民年金のほかに国民年金基金と民間の保険会社の年金に加入しており、現在月18万円程度の収入があります。
それに対して支出は、所得が下がったことと、介護度が上がったことで、月介護医療院の費用月14万円程度で賄えています。

もし、腰の病気が無くて営業を続けていれば、4・5年で債務超過にはならなかった気もしますが、消費税の軽減税率や材料の値上がり、コロナの影響等を考えると、多分病気が無くても立ち行かなかったでしょう。
結局フローだけ考えて、きちっとストックとしての廃業費用を考えていなかった、弟の認識の甘さが債務超過の原因だと思います。

私が思うこと

弟の失敗にかんがみ、断捨離とストックを増やして終活を行い、娘たちに迷惑をかけないよう心掛けたいと思っています

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