【体験者のプロフィール】
- 性別:男性
- 職業:サービス業
- 年齢:39歳
- 借金:550万円
- 対応方法:自己破産
認知症の親に借金があると分かったきっかけ
父親を早くに亡くし、女手一つで僕を育ててくれた母親は3年ほど前から不可解な言動をとるようになりました。
最初は僕に何度も同じ話をしたり、元々得意としていた料理の味付けがおかしくなるというものでしたが、その症状は徐々に悪化し、真夜中に買い物に行くと出かける、素手で食事をとる、トイレの場所がわからなくなるという言動が日常化しました。
そう、母親は認知症になってしまったのです。今では孫の顔どころか僕の顔も忘れてしまっている。
母親が認知症というだけでも僕にとっては一大事なのに、追いうちをかけるかのようにもう一つの問題が僕に伸し掛かったんです。
それが母親の借金です。
母親の物忘れが酷くなった頃にかかってきた銀行からの連絡で判明しました。
認知症の親が抱える借金は500万円
初めて銀行から支払い催促の連絡が来てから、他の消費者金融や銀行からの連絡も相次ぎました。母親が認知症だから借金は払えない、という訳にはいかず容赦なく支払い催促は続いたんです。
認知症の母親に借金の事を問いただしてもまともな答えは返ってこない。借金自体が何なのか分かっていない。その為、僕は母親の自宅や財布にあるカード類を全て確認し、片っ端から問い合わせした。
そして分かったのは、少なくとも母親は500万円以上もの借金を背負っていたという事だった。
弁護士に相談し、打開策を模索する
認知症の母親が抱えた借金、このようなケースでどう立ち回れば良いかなんて僕には分からなかった。
当然500万円もの借金を肩代わりできるだけの貯金はない。
インターネットで調べてみても「子供に返済義務はない」というものばかり。
子供に返済義務はないからといって、これまで育ててくれた実の母親を借金漬けにしたまま放っておくなんてできなかった。
そこで僕は借金問題に強い弁護士に相談する事にしたんです。
その結果、弁護士からは債務者(母親)本人に貯金が全くなく支払いが不可能な場合は自己破産が妥当、しかし認知症では本人による手続きもできない為、まずは成年後見開始の申立てを行う必要があるとの事でした。
要するに認知症で判断能力が低下している母に代わって財産の管理ができる人(成年後見人)を選出し自己破産手続きを行おうという事だそうです。
弁護士を後見人として選出する事もできるそうなのですが、聞けば僕が依頼した場合だと月額2万円程の支払わなければならない基本報酬が発生するとの事だったので、自分が後見人になる事にしました。
その後、僕は別の司法書士事務所へと伺い、後見開始に必要な申立て書類の作成を依頼しました。
前の弁護士にお願いしなかったのは、単純に支払い報酬が高額だったからです。
後見人になり、母親の借金を自己破産
申立後、書類の用意やら裁判所での事情聴取やら色々と大変だったのですが、2ヶ月程で何とか母親の後見人になる事ができ、司法書士からのサポートもあり母親の借金状況や貯金も把握する事ができました。
予想通り貯金はほぼゼロ、借金は550万円と最悪な状態です。
そのまま自己破産手続きもお願いしようと思ったのですが、司法書士は自己破産手続きに関する書類作成の代行しか行えないらしく、もし裁判所への出廷などの手間を省きたい場合や、事をスムーズに進めたいのであれば弁護士が良いと言われたので、最初に相談した弁護士の元へ足を運びました。結構転々としています。
自己破産というだけあって、弁護士費用は20万円ほどかかったのですが、自分自身ではどうする事もできなかったので、背に腹は代えられない思いで弁護士に自己破産を依頼しました。
自己破産のおかげで借金は無くなったが
自己破産手続きから半年ほど経ち、母親が抱えていた借金の返済義務は無くなりましたが、母親が所有していた家や土地は破産手続きによって失いました。
その為、今は僕の家族が住む賃貸マンションの一室で過ごしてもらっています。
ただ、症状は悪化する一方で、僕が仕事に行っている間、介護を手伝ってくれている嫁にも大きな負担となってしまっています。その為、今後は介護施設に入居してもらう事も検討中です。
今回の件、正直言ってかなりしんどかったです。
こんなに頑張ったのに感謝される訳でもないし、多額の費用も支払ってしまったので金銭面、精神面ともに辛かったです。
まだ初期症状だった頃に前もって母親の金銭管理をしっかりと行っておくべきだったなと、今は後悔しています。