専業主婦のAさんは、夫と小学生の子どもと暮らしていました。
家計はAさんが管理しています。
結婚当初はまだ専業主婦ではなく、フルタイムの社員として働いていました。
子供は生後半年から保育園に預けて出勤していました。
ところが子供が小学生に上がると一年生の初めの頃は早く帰ってきてしまうため、学童保育を利用して働き続けることを考えていました。
しかし体調を崩したこともあり、Aさんは退職してしばらく専業主婦になることにしたのです。
社会から取り残された気分から買い物依存へ
専業主婦になったAさんは、だんだんとネットショッピングにハマってしまうようになりました。
それまでずっと働いていたため、家に一人でずっといるということがありませんでした。
子供が学校に行っている間一通りの家事が終わってしまうと、何をしてよいのか判らず時間を持て余すようになってしまいました。働いていた当時は、休みの日に街へ出かけて買い物をすることでストレスを発散していたこともあり、気分転換にと、ネットショッピングをするようになりました。ネットショッピングを選んだのは、家事の合間や子どもが帰宅するまでのわずかな時間でも買い物ができるためでした。
しばらくは、自分のお小遣いの範囲でショッピングを楽しんでいましたが、だんだんと歯止めが利かなくなり次第に高額な靴や洋服を毎日のように購入するようになっていきました。
クレジットカードの便利さにハマり170万の借金ができた
あるとき、現金が手元になくクレジットカードを使い買い物をしました。
クレジットカードは、海外での新婚旅行用に作成したものです。
今まで日常生活では現金で支払いをしていたので、初めてクレジットカードでの支払いを体験したAさんはクレジットカードの便利さに目覚めてしまいました。
それ以降もクレジットカードで買い物がやめられず、かといってショッピングで出来た借金は夫に内緒で生活費から一度で支払える金額を超えており、残高不足により次第にクレジットカード会社から支払いの催促の連絡が来るようになりました。
困ったAさんは、夫に内緒で銀行カードローンにてお金を借り、取り急ぎクレジットカードの支払いを済ませました。
一旦、支払いが済むとまたカードを使って買い物をし、今度はネット銀行のカードローンからおカネを借りるようになり、あっという間に銀行ローンの借金は金利と併せて170万円まで膨らんでしました。
司法書士事務所に相談
借金の金額が170万円で膨らんでしまったAさんは、返済日が近づくたびに落ち着かなくなり、急いで調べた司法書士事務所に相談に行くことにしました。
専業主婦でショッピングのやり過ぎから始まってしまった借金解決として、まずは今ある借金をどのようにするかについて、どのような債務整理の方法があるのかアドバイスを受けました。
債務整理とは?
債務整理とは、弁護士や司法書士などの専門家が債権者(銀行などの金融機関)と債務者(返済義務のある人)の間にはいり、利息のカットや長い期間を掛けた返済方法などを債権者と交渉したり、返済義務を免除する手続きなど行うことをいいます。
債務整理にはいくつかの方法があり、司法書士や弁護士などの専門家は、いろいろな角度からみて、その人にあった方法を教えてくれます。
債務整理が本格的にスタートすると、債権者からの返済催促の連絡はストップするため、精神的には楽になります。
どの債務整理を行う場合でも、「引き渡し計算」という利息を払い過ぎていないかなどのチェックを行い、正しい借金金額を出します。利息を払い過ぎているような場合は、債権者に過払い金請求を行います。
それでは、債務整理の種類について見てきます。
債務整理には以下の三種類があります。
- 任意整理
- 自己破産
- 個人再生
この中の「個人再生」という方法を行うには、以下の条件が必要でした。
- 一定の収入があること
このため専業主婦であるAさんは使う事が出来ませんでした。
任意整理
司法書士や弁護士などの専門家が、債権者(銀行やクレジットカード会社など)と債務者(返済義務のある人)の間に入り、利息のカットや長い期間を掛けての返済方法などを交渉して、借金返済を楽に行えるようにする方法です。
任意整理の一番のメリットとしては、裁判所を通さないので手続きが簡単にできることです。
任意整理の交渉が上手くいくと、利息が減額したりゼロになり、今まで利息だった分が返済分になるため、完済しやすくなります。
また、返済期間も長期に渡って返却することが可能になり、月々に掛かる返済負担が少なくなります。
ただし、この方法ではあくまでも利息のカットと長期的な返済が大きな要点であり、任意整理後も債権者へ借金を返済する必要があります。
自己破産
自己破産とは、もうこれ以上借金の返済能力がないとみなされた場合に、裁判所にて返済義務を免除の手続きを行い、裁判所にて認められれば支払いが免除されることをいいます。
自己破産が認められるためには、一定以上の財産は借金返済に充てられるため、資産や財産や失うこととなるでしょう。
借金の金額がそれほど多くない場合でも、今後の安定した収入が認められない場合などは、裁判所にて自己破産が認められます。
専業主婦であるAさんが、自己破産をしても夫や家族には影響はありません。
Aさん個人の財産以外の、夫や他の家族の財産や資産が失われるという可能性は低いと言えるでしょう。
任意整理・自己破産、家族にバレる?
専業主婦のAさんが、もっとも気にしたのが「夫にバレるか」という問題でした。できれば誰にも借金があることなど知られたくはないでしょう。
司法書士や弁護士などは守秘義務があるため、専門家の方に相談したからといって家族にばれる心配はまずないと言っていいでしょう。
では、任意整理と自己破産と選んだ場合、どちらの方が家族にばれ易いのでしょうか。
任意整理 | 債権者との交渉はすべて専門家が行うので、家族にバレる可能性は低い ※1 |
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自己破産 | 裁判所に提出する書類に家族の収入証明に関する書類が必要となるため、バレてしまう可能性がある |
※1 任意整理で借金をした金融業者と「和解」が成立したあと、再度滞納してしまと、損害賠償や一括返済などの措置が取られることとなり、ばれてしまう可能性が高くなりますので、和解後の借金滞納は行わないようにしましょう。
自己破産には「同時廃止・管財事件」がある
自己破産には「同時廃止」「管財事件」と2つの種類があります。
裁判所に破産申し立てをした時に、価値のある財産を持っていない場合は「同時廃止」になり、自宅に価値のある財産があると認められると「管財事件」とされ、自宅に裁判所から管財人が派遣されてきます。
管財裁判では、こうした管財人が調査にやってくることから、家族にばれてしまう可能性は高いでしょう。
債務整理をすると今後の生活にどんな影響がある?
任意整理や自己破産を行うと、ブラックリストといって信用情報機関に事故情報として載ることになり、5年~10年程は借金が出来なくなります。
選んだのは「任意整理」
Aさんは、専門家と相談の上、任意整理を選びました。
今回任意整理を選んだポイントは以下になります。
- 長期的な借金状態になっていないこと
- Aさんがパートに出る予定だということ
現在は任意整理を行い、現在もコツコツを返済中です。
債務整理をした後も、生活を見なおすことが大切
専門化の力を借り、債務整理をした後は生活を見なおすことが大切です。
専業主婦であったAさんの場合、買い物依存になっていたことから、その治療も必要でした。
Aさんは、まずは買物してしまう環境を作らないことが大切なこと、家計の収入と支出のバランスを見なおすことが必要だと、専門家よりアドバイスを受けました。
Aさんが行った任意整理後の生活の見直し
パートに出た
Aさんは自身の体調不良と子供が保育園から小学校に上がり早く帰宅するという理由から、フルタイムの仕事を退職していました。しかし今回時間を持て余したことからネットショッピングにハマってしまったため、パートに出ることにしました。
子供が学校に行っている間に短時間のパートを見つけ働きだし、出来るだけ家に一人でいる時間を減らすことにしました。
家庭の中の無駄な出費を見なおす
次に家庭の中の収支のバランスを見なおしました。
保険の見直しやスマホを格安スマホに変える、今まで毎週のように家族で行っていた外食を減らし、家族で出かけてもお弁当を持参するなど工夫をしました。
不用品を処分した
Aさんは、ネットショッピングで大量の洋服を購入していましたが、ほとんど使用せずクローゼットの中に入った状態でした。
未使用品を見なおし、使用する予定のない洋服や靴などをネットオークションなどで処分し、獲た収入を借金返済に充てました。
早めに専門家の扉をたたこう
ショッピング止められず、すでに借金が出来てしまっているような場合はたとえ少額でも危険です。
とくにカードを使ったリボ払いは、ほとんどが利息で消えていくため、返済が長期間続くことになり、借金が減らない計算になっています。
もしすでに、ショッピングなどが原因で借金が出来てしまっているような場合は、早めに行けば行くほど、早めに解決しやすくなります。
自分解決しようとせず、早めに司法書士や弁護士など専門家に相談に行きましょう。