自己破産をすると、原則として借金の返済義務が免除されます。つまり、借金を返済しなくてもよくなるということになります。ただし、大きなメリットがある一方、大きなデメリットもあるため、よく理解したうえで検討する必要があります。
自己破産によって「車やスマホは手放さなければならないのか?」「家族の財産はどうなるの?」などといった疑問もあるのではないでしょうか?
債務整理の中でも「自己破産」のデメリットと、よくある質問について詳しく解説します。また、自己破産の誤解されがちな情報も紹介していますので、自己破産のデメリットをよく理解し、ご自身の自己破産に対する情報が正しいかどうかを確認して検討しましょう!
自己破産のよくある質問
いざ自己破産をしようとしても、わからないことが沢山あるんじゃないでしょうか?
ここでは、過去にあったよくある質問を紹介しています。「自己破産をすると、車やスマホの所持はできるのか?それとも処分しなければならないのか?」「現在無職だが、自己破産をすることができるのか?」などといった疑問について回答しています!
ご自身が持った疑問は、他の人も疑問に思ったことがあるものが多いため、過去の質問を参考にして疑問を解消しましょう。
- 質問1. 車はどうなるの?
- 質問2. 携帯電話・スマートフォンはどうなるの?
- 質問3. 自己破産は2回目もできるの?
- 質問4. 無職でも自己破産はできるの?
質問1. 車はどうなるの?
自己破産をする際に所持している自動車は、手放さなければならない可能性があります。車の評価額が20万円以上の場合は、換価・処分の対象となってしまうんです。
ただし、既にローンを完済しており、初年度の登録(車が製造された日付)から7年以上経過した車であれば、税務上の減価償却は終了しているため、価値がないと判断されますし、一般車であれば一定の年数を経過していれば評価額は20万円を下回るため、手放さずに済む可能性があるので、是非確認してみてください!
しかし、外国車やハイブリッド車などは査定額が高額になることが多いため、換価・処分の対象となる可能性が高くなります。
破産手続き中に『ローンの一括返済』は絶対ダメ!!
破産手続き中に『ローンの一括返済』は絶対ダメ!!
自己破産で車を手放したくないために、車のローンを一括返済して自分のものにしようと考える方もいるかもしれません。ですが、自己破産の手続き中に、車のローンを返済しては絶対にダメです!
先述したとおり、そもそも自己破産とは、破産者が所有している財産を換価して債権者に分配し、分配しても返済できない債務が免責の対象となる手続きであるため、車のローンだけを返済することダメなのです。
こういったことをした場合、偏頗弁済(へんぱべんさい)という詐欺行為になってしまうため、免責許可がおりない(自己破産ができない)可能性があるため要注意です!
質問2. 携帯電話・スマートフォンはどうなるの?
携帯電話やスマートフォンを、自己破産したときに手放さなければいけないかどうかは、携帯料金(端末代)の支払い状況によって変わります。
分割払いをしている場合や滞納している場合は解約となり、携帯電話・スマートフォンの返還を求められることがあります。支払いがすでに終わっており、滞納していない場合は、そのまま使用しても問題ありません。スマホは自己破産後も手元に残しておきたいですよね。自己破産前に支払いを全て終わらせておきましょう!
質問3. 自己破産は2回目もできるの?
自己破産後に2回目の自己破産をすることは可能です。 ただし条件をクリアしなくてはなりません。
- 前回の自己破産から7年以上経過していること
- やむを得ない事情があること
自己破産の審査は前回よりも厳しくなります。そのため、2回目の自己破産に至った理由はより深刻なものである必要があるんです。2回目の審査に通らなかった場合は、即時抗告するか他の債務整理(任意整理か個人再生など)を検討しなければなりません。基本的に1回自己破産をした人が、2回目をしようとした場合は難しいと考えるべきでしょう。
質問4. 無職でも自己破産はできるの?
無職でも自己破産をすることはできます。ただし無職の人が自己破産をするためには以下の条件に当てはまる必要があります。
- 債務の返済が不可能
- 免責不許可事由にあたらない
- 債務が非免責債権ではない
自己破産の手続きをするためには費用がかかるため、無職である場合はその費用を捻出できない可能性が高くなります。その場合は、自治体に相談するなどして自己破産をするためのお金を捻出する必要があります。
生活保護受給者であっても自己破産できます。債務者が生活保護受給者である場合は、予納金や弁護士への依頼費用が免除されます。
自己破産のよくある誤解
自己破産を検討している場合、様々な情報を見聞きしますよね。
しかし「家族の財産も手放さなければならない」「自己破産したことが会社にバレてしまう」などといった誤った情報が、まことしやかに自己破産のデメリットとして知られていたりするんです。
ここでは自己破産に関するよくある誤解について紹介いたします。
誤解されている情報を、誤った情報であると正しく理解し、自己破産がご自身に合った債務整理の方法である場合は、専門家に相談するなどして速やかに手続きを進めましょう!
- 誤解1. 『家族の財産も処分される』
- 誤解2. 『会社にバレる』
- 誤解3. 『戸籍や住民票に掲載される』
- 誤解4. 『選挙権がなくなる』
- 誤解5. 『年金をもらえなくなる』
- 誤解6. 『海外に行けなくなる』
誤解1. 『家族の財産も処分される』
自己破産で、債務者以外の家族名義の財産が清算・処分されることはありません。家族が債務者の借金を返済しなければならないと考えている人が多くいますが、法律的根拠は全くありません。
そのため、自己破産で換価処分されるのは、債務者名義のものだけで、家族名義のものが対象となることはありません。
ただし、家族が保証人になっている場合は、保証人である家族が債務(借金)の弁済義務を背負うことになり、借金の肩代わりをしなければならなくなります。特に配偶者が保証人である場合は、債務者と離婚しても債務の返済義務がなくなることはないため注意が必要です。
誤解2. 『会社にバレる』
基本的に裁判所から勤務先に通知することはないため、会社にバレることはありません。ただし次の場合には自己破産をしたことが会社にバレる可能性があります。
- 勤務先の借金を自己破産する場合
- 自己破産で資格制限を受ける職種である場合
- 官報を確認する勤務先である場合
誤解3. 『戸籍や住民票に掲載される』
破産者であることが戸籍や住民票に記載されることはありません。
ただし、免責許可決定を受けられなかった場合は、戸籍や住民票とは違うものの、本籍地の市区町村役場が管理している「破産者名簿」に記載されることになります。ですが、ほとんどの場合は破産者名簿に記載されることはありません。
誤解4. 『選挙権がなくなる』
自己破産で選挙権を失うことはありません。
自己破産をすると「選挙権がなくなるのでは?」「投票できなくなるのでは?」と心配する方がいますが、選挙権は国民の権利なので、その権利を自己破産によってはく奪もしくは制限を受けるといったことはありません。
自己破産をしたとしても、選挙での投票や立候補はできます。
誤解5. 『年金をもらえなくなる』
自己破産をすると年金をもらえなくなることはありません。
年金は「差し押さえが禁止されている財産(自由財産)」であるため、今後受け取るはずの年金を失ったり、減らされたりといったことはありません。また、現在年金を受給中の方でも、自己破産によってもらっている年金に影響が出ることもないので安心してください。
ただし「既に受け取った年金」は差し押さえられる可能性があるため注意です。 受給済みの年金は、年金としてではなく現金や預貯金として扱われるため、換価処分の対象となります。
誤解6. 『海外に行けなくなる』
海外への渡航については、自己破産手続き中と自己破産後で扱いが変わります。
項目 | 内容 | 制限について |
---|---|---|
自己破産手続き中 | 場合によっては渡航できない | 裁判所の許可が必要 |
自己破産後 | 自由に渡航できる | 制限はない |
自己破産手続き中の渡航
破産手続き中は、居住地を離れる際には破産管財人の同意を得た上で、裁判所の許可が必要になります。
債務者が海外へ渡航した場合、連絡がとれなくなって手続きが滞ったり、債務者が逃亡することを防ぐためです。
仕事の出張での渡航は大抵の場合問題ありませんが、旅行が目的の場合は遊びのための浪費と判断されて許可が下りない可能性が高くなります。
自己破産後の渡航
自己破産後の海外への渡航は制限されません。破産手続きが終わっているため、破産管財人や裁判所が居住地を離れることを制限する必要がないためです。
自己破産には2種類ある
自己破産のデメリットを説明する前に、自己破産と一言で言ってもその手続きには「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があります。これらの違いは、自己破産手続きの進め方の違いにあります。自己破産のデメリットは、これらのいずれかによって変わってきます。
ご自身が破産手続きをする場合、どちらのケースにあたるかを確認したうえで、デメリットについても確認しましょう。
同時廃止事件
債務者(破産者)の資産が「破産手続き費用に満たない場合」に、同時廃止事件となります。同時廃止事件は、破産手続開始決定と同時に、破産手続きを終了させる廃止決定がなされます。
破産管財人が選任されることはなく、分配できる破産者の財産がないため、財産が債権者に分配されることもありません。裁判所に申立てて「免責許可決定」を受けることができれば、一部の債務を除いて支払い義務はなくなります。
申立てから免責許可決定までの期間は、たいていの場合4~6ヵ月程度です。
管財事件
管財事件は、破産管財人が選任され、債務者(破産者)の財産調査、管理、処分、配当などを行います。これらの一連の作業があるため、同時廃止よりも時間と費用がかかります。
一般的に、評価額20万円以上の財産があるか、33万円以上の現金があれば管財事件になる可能性があります。
裁判所に申立てて「免責許可決定」を受けることができれば、一部の債務を除いて支払い義務はなくなります。申立てから免責許可決定までの期間は、たいていの場合6ヵ月~1年程度です。
また、管財事件の中には通常の管財事件よりも手続きを簡略化した「少額管財事件」があります。
自己破産は弁護士に相談しよう
自己破産は、債務の支払い義務が免除されるというメリットが大きいからといって、一概に債務の金額だけで決められることではありません。自己破産という手続きの背景にあるデメリットをよく理解した上で検討する必要があるため、弁護士に相談し、自身の債務整理方法として自己破産が妥当なのかどうか、自己破産によって被るデメリットよりもメリットが上回るのかどうかをよく考えましょう。
自分では判断がつかないことも、弁護士に相談・依頼することで解決し、時間をかけることなくスムーズに手続きを進めていくことができるでしょう!