借金にも「時効」というものが存在するのをご存知でしょうか?
時効と言えば、暴行や窃盗といった刑事事件でよく耳にする言葉ではありますが、実は借金問題など民事が関わるトラブルにも時効は存在しています。
借金の返済を長期的に滞納している人の場合、条件を満たして必要な手続きを済ませれば消滅時効が認められ、借金返済の義務が消滅します。
そこで今回は、借金の消滅時効について詳しく解説していきます。
借金にも時効があるのか?
一般的にあまり知られていませんが、実は借金にも「時効」が存在します。
成立すれば返済をする義務がなくなる「借金の消滅時効」というものがあります。
ただこの点で注意しなければならないことがあります。
お金を借りた側の債務者が、返済をせずに長期に渡って滞納を続けているだけで時効になるわけではないということです。
これについては後述します。
借金の時効とはどういうものか
借金問題などを規律する民法が定めている時効には「取得時効」と先程も紹介した「消滅時効」の2種類が存在しています。
民法が定める「時効」
- 取得時効
- 消滅時効
消滅時効とは、一定の期間権利が行使されなかった場合、その権利は消滅してしまうという制度です。
つまりは「消滅時効」という法律上の制度によって債権者がお金を返してもらう権利自体をなくしてしまうことを指しています。
取得時効は他人の物や財産を一定の期間占有し続けると、その所有権利は占有していた者に渡るという権利を言います。
消滅時効 | 一定の期間権利が行使されなかった場合、その権利は消滅してしまうという制度 |
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取得時効 | 他人の物や財産を一定の期間占有し続けると、その権利は占有していた者に渡るという制度 |
借金における返済義務は、お金を貸している側(債権者)からすれば返済を請求する権利「貸金返還請求権」を行使している事になりますが、借金の返済が滞納され続けるという事は、この貸金返還請求権が行使されなかったという事になりますので、一定期間が経つとこの権利は消滅し、同時に借りている側(債務者)の借金返済義務も消滅します。
以上の事から、借金の時効は「消滅時効」である事が分かります。
借金の時効は5年
民法上、借金を請求できる権利は10年間行使しないと消滅するとされていますが、商法の場合は権利を5年行使しなければ消滅するとされています。
商法とは、借金の借入先が「商人」である場合に適用される法律の事であり、この商人というのは消費者金融、カード会社、信販会社、銀行など、営利を目的とする法人が該当します。
営利を目的としてお金を貸している訳ではない個人や信用金庫の場合は民法が適用されます。
借金の時効はいつから計算されるか
借金における時効の起算点は、債務者が借金を最後に返済した日の翌日からカウントされる事になります。
たとえば、2020年5月1日に最後に借金を返したとすると、翌日の5月2日が消滅時効の起算日となり、2025年5月1日が経過することにより、消滅時効が完成します。
「時効の援用」をしなければ時効は認められない
消滅時効が完成したとしても、それだけで借金を返さなくてもよくなるわけではなく、それに加えて「時効の援用」を行わなければ、時効とは認められません。
つまり、債務者が「消滅時効が完成したので、私はあなたに借金を返す義務はありません」という意思表示を債権者に対してすることによって、初めて債務者は借金の返済義務を免れることになります。
このような手続きが設けられている理由は、たとえ長期間返済ができない期間が続いても、必ず返すという意思を持っている方が中にはいるからです。
そのためこの制度を利用するか否かは、本人の意思に任せられていると言えるでしょう。
なお、時効の援用の意思表示の方法としては口頭でも法的には認められますが、きちんとした記録として残すためにも、内容証明郵便を利用することが一般的な方法となっています。
借金の時効が中断されてしまうケース
借金の時効は原則5年とされていますが、単純に借金の返済を滞納し続けて期間が経過したら時効成立という訳ではありません。時効にはカウントを中断する制度が存在しており、この中断が起こると時効のカウントはリセットされる事になります。
ようするに、借金の返済を3年滞納している状態で時効がストップすれば、そこから更に5年経過しないと時効は成立しないという事です。
なお、時効が中断する理由は以下のようなものが挙げられます。
裁判上の請求
借金の返済を滞納し続けば、債権者は裁判所を通じて借金返済の請求を行う事ができます。
例えば、支払督促の申立てや和解・調停の申立てなどが挙げられますが、これらがあった場合、借金の時効は中断されます。
また、裁判で判決を取られた場合、その時効はリセットされるだけではなく、新たに10年の時効が設けられる事になります。
仮差押え、仮処分
借金の消滅時効は、権利を一定期間行使しない事で消滅する制度です。
差押えなどの強制執行は、借金の返済を強制的に実現する手段であり、権利を行使したとみなされる手段ともなる為、時効は中断されます。
勿論、判決がでるまでの間に財産を仮に差し押さえておく「仮差押え・仮処分」という制度も、権利行使の一つとして認められています。
債務の承認
債務の承認というのは、「私は借金をしています」と認めてしまう事を言います。
代表的な債務の承認として挙げられるのが「返済」です。
例えば、借金の返済を滞納してから3年後、少しは返済しようと少額でも返済した場合、それは債務の承認となる為、時効はリセットされます。
借金の時効を成立させるのは至難の業
借金の返済を滞納し続けた場合、借入先である金融機関は必ず債務者に対して返済をしてもらう為の手続きを行います。
もちろん、債権者側も借金の事項については認知している金融のプロですので、その時効が経過しないように裁判などの対策をとってきます。
そうなってしまった場合、借金の返済義務に係る消滅時効は中断され、またさらに5年が経過しなければ消滅時効は完成しません。つまり、事実上消滅時効の完成は見込めないと言っても過言ではないでしょう。
このように、借金の返済を滞納し続けた結果、時効を迎えて帳消しになるという可能性は極めて低い為、本当に借金が返済できないのであれば時効に頼るより、弁護士・司法書士などの専門家に頼った方が健全です。